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堕天使殺人事件  (ねこ3.8匹)

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二階堂黎人、柴田よしき、北森鴻篠田真由美村瀬継弥歌野晶午西澤保彦小森健太朗谺健二愛川晶芦辺拓著。角川文庫。

北海道・小樽を舞台に繰り広げられる猟奇殺人。新聞社に恐怖のビデオ・テープを送りつけた稀代の怪人の名は“堕天使”!!この怪人は一挙に男女十数名を惨殺し、ウエディング・ドレスを着せた死体を日本各地にばら撤いた。しかもバラバラにした死体を縫合針で繋ぎ合せて…。必死の捜査を嘲笑うかのように、“堕天使”は密室殺人を敢行し、さらに空中に雲散霧消するなどその妖術を披露する。警察を手玉に取る怪人“堕天使”の正体とは?。現代を代表する11人のミステリー作家による、前代未聞のリレー本格推理小説。 (裏表紙引用)


昨年初めて「9の扉」というリレー小説を読んだ時に、べるさんにお薦めいただいたのがコレ。「9の扉」とはコンセプトが違うのかもしれないけど、こちらは誰かが暴走したりお話が遠くへ行ってしまう事もなく、完全に1つの長編小説のように読めた。トップバッターが本格ミステリの雰囲気と設定を描かせたら一流の二階堂さん、アンカーが乱歩チルドレンの芦辺さんというのも良い結果を生んだ。また、作家の人選も成功しているし描き位置も適材適所だったと思う。確かに1人の作家が描いた方が回り道もなくキャラクターも安定しただろうが、その変わりに誰もが予想もつかない圧倒的な真相という
宝物を得た気がする。継続ランナーへの無茶振り、推理の反証、持ちキャラの暴走、全てをアンカーに委ねるのではなく、作家1人1人が展開を進め、同時に謎の方向を決めてゆく。それぞれが予想した構想とはまるで違う結末になっただろうが、芦辺さんの作品があがってからの作家全員の満足した顔が見えるようだった。

1つのミステリ作品ではなくリレー小説として評価すると、これほどのものはないんじゃないかって気がする。好きな作家の番が来るとうきうきし、知らない作家が意外に面白味があるとワクワクする。村瀬さんなんてお名前も知らなかったけど、出て来た持ちキャラが気になったなあ。最初に出て来た刑事や記者の人物像が西澤さんあたりからだんだんおかしくなって来たのも笑えるし(笑)、芦辺さんが愛川さんの持ちキャラを魅力的に動かした(桐野さん、カッコ良かったぞぅ^^)のも嬉しいサービス。
でも、あのイタリア人の探偵さんは誰?^^;

                             (540P/読書所要時間4:30)