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少女たちの羅針盤  (ねこ3.8匹)

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水生大海著。原書房

女子高校生四人組の演劇ユニット「羅針盤」。ストーリーとコンクールでその名を知らしめたが、メンバーの突然の死によって活動を停止する。それから四年の月日を経て、?復讐は始まる。島田荘司選第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作受賞作。 (あらすじ引用)


うおお、面白かった!!
島田荘司氏が監督する「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の第1回受賞作品で、「2010本格ミステリ・ベスト10」にも第24位に登場している。こなれた文章とわかりやすい<過去>と<現在>の二重構成、現代少女のリアルな心情を映し出した優れた作品だ。演劇という題材は通常親しみやすくはないが、小説や漫画では扱いやすいのだろうか。(美内すずえさんの功績か?)

<現在>の章では、女優となったある一人の女性が、ホラー映画主演に抜擢された経緯の説明から始まる。この女優が<過去>の人物の内の誰なのかは明らかにされておらず、彼女は製作現場で見えざる敵から脅迫される事になる。彼女は過去に人を殺しているらしいのだが。。
<過去>の章では、後に演劇界でひそやかに名を馳せるユニット「羅針盤」の結成秘話から始まる。
メインは4人の少女で、その中の1人は通う高校が違う。彼女達のがむしゃらに駆け抜ける演劇活動が
どういう経緯を経て殺人に発展するのか。

メイン4人の個性が際立っており、活動を阻害するギャルや志気を下げる顧問などが絡みそれだけでも読ませる内容。この世代ならではの蒼さすらまぶしく、諍いや窮地すらも苛々を通り越して微笑ましい。自分には劇団員の知人が居るのだが、自分と同世代のその人とそれほど彼女達の言っている事の違いは感じない。一生を捧げるのに足る魅力ある世界なのだろう。

ミステリとしても、弱いものではない。過去に置いて来た伏線と現在に起こる謎が繋がり合い、意外性も充分。犯人を追い詰める演出も本格ミステリのそれで、緊迫感を上げている。証拠がない為にとった手段が物語を盛り上げる意味での功を奏したいい例だろう。作風としては、湊かなえさんに近いものを感じた。ゆえにそれなりの不快感はあるのだが、謎が氷解する爽快感と合わせてこちらの勝ちだろう。


1つだけ、野暮かもしれないが気になった点。ネタバレ注意です。↓















これ、「強迫による自白」じゃないの?だったら認められないんじゃ。。。なつめが警察にそこは言わなかったって事かな。正直あまりこういうの好きじゃない。自分が冷たい人間なのかもしれないけど、身内でもないし4年間も復讐の為の絆が揺らがないっていうのも有り得ない気が。忘れろって事じゃなくて、復讐は犯罪なわけで(死刑とか言ってるし死体のフリをしたりするのも悪質だと思う)。。復讐しないと人生前に進めないとか、変だよ。