すべてが猫になる

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デス・コレクターズ/The Death Collectors  (ねこ3.6匹)

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ジャック・カーリイ著。文春文庫。

死体は蝋燭と花で装飾されていた。事件を追う異常犯罪専従の刑事カーソンは、30年前に死んだ大量殺人犯の絵画が鍵だと知る。病的な絵画の断片を送りつけられた者たちが次々に殺され、失踪していたのだ。殺人鬼ゆかりの品を集めるコレクターの世界に潜入、複雑怪奇な事件の全容に迫ってゆくカーソン。彼を襲う衝撃の真相とは。 (裏表紙引用)


PSIT(精神病理・社会病理捜査班)カーソン・ライダー&ハリー・ノーチラスが活躍するサイコ・サスペンスシリーズ(長っ)第2弾。先に第3弾の「毒蛇の園」を読んでしまったのは失敗だったが、この作品を読んで色々人間関係の謎が解けた。アヴァと別れた経緯・・・ダンベリーとの心の疎通・・・
そしてカーソンの実兄であり連続殺人犯ジェレミーの実態。第1弾は結末が凄すぎて内容は銀河の彼方だったので勝手に自分で補完しているところもあるかもしれないが。

しかしあまりノレなかったこのシリーズ、この第2弾が一番面白いと思ったな。それは本書だけが他2冊のような”煽り”がなかった事と無関係だろうか。過剰な期待をするでもなく、時間はかかりつつ(頼むから呼びかけは全員ファーストネームで統一してくれ!)も普通にドキドキと読めた。

異常犯罪を扱っているシリーズの割に、遺体のグロさだけを押し出していないところがいい。遺体の瞼に乗せられていたキャンドルや安価な指輪、被害者の正体の意外性など、小道具使いがミステリ的で論理性もある。また、要所要所でジェレミーの出番が際立ち異常犯罪の雰囲気を盛り立てる。30年前に
裁判所で銃殺されたシリアル・キラーが事件の要となっており、濃密な内容。動機が意味不明なところも事件の特色となっていてマイナスではない。
しかしこの作家がいまひとつ化けきれないのは、やはりキャラクターの弱さ。どんでん返しもないし、読者が求めている地点にはまだ遠い気がする。それでもいいと気に入って読み続けてくれる読み手を少しずつ掴んで行くしかないか。

                             (431P/読書所要時間5:30)