すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

シアター!  (ねこ3.8匹)

イメージ 1

有川浩著。メディアワークス文庫

小劇団「シアターフラッグ」?ファンも多いが、解散の危機が迫っていた…そう、お金がないのだ!!その負債額なんと300万円!悩んだ主宰の春川巧は兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益からこの300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされるのだが…。 (裏表紙引用)


大好きな有川さんが、「創刊!メディアワークス文庫」から作品を上梓された。わーい。安いぞー。買えるぞー。というわけでうきうきと読む。

様々な分野にアンテナを張っている有川さんの今作は、演劇界を描いたもの。単に芝居の素晴らしさや若者の熱さを描いたものではなくて、ビジネス面を盛り込んでシビアでさえある。ゆえにライトノベルでも大人にも読みやすい。ベタ甘要素がないのが意外だ。小劇団の複雑な世界はバンドにも通じる面が少しはあるなあと思った。アンダーグラウンドには一般に向けていない閉じた価値感が確かにあるが、本書ではメジャーとマイナーの境目に届く劇団の物語となっているためエンタメ路線を外さない。そういうところも有川さんのプロらしい目線だ。作中、「わかりやすくて何が悪い」と言った台詞が多用されるが、有川さんがご自身の作風に対し受けている評価ではないだろうか?こういう作品は、通り一遍の取材をして己の主観しか取り込めない作家には描けないものだろう。物事の両面を見るというのはなかなか難しい。結果それが深みのない軽快さに表現が偏ったとしても、伝わらないとすればそこから先は書き手が及んでいい領域ではない。

まあ、堅苦しく考えて読む物語ではないが。キャラクターの1人1人が立っているのである意味物足りない。自分の好きなキャラクターにスポットをあてて続編を!というのは全てのファンの願いだろう。
正直、兄弟愛というのはさすがに引いたし^^;ヒロイン千歳の苦労を背負っていますオーラ満点のキャラや自信の引き出し方がイラッと来る牧子は好きではなかった。キレキャラのまま放置のジンや関西弁リアリストのゆかりが好みだったな^^あと、本書で演じた巧脚本の『掃きだめトレジャー』はあまり面白そうとは思えず^^;

                             (322P/読書所要時間2:30)