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愚行録  (ねこ3.7匹)

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貫井徳郎著。創元推理文庫

ええ、はい。あの事件のことでしょ??幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家四人が惨殺された。隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる、「事件」と「被害者」。理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。確かな筆致と構成で描かれた傑作。『慟哭』『プリズム』に続く、貫井徳郎第三の衝撃。 (裏表紙引用)


これ、書ける事が限られるなあ。ネタバレになっちゃうもん。というわけで、無難に感想を書いてみる。。

さすが貫井さん、面白さは相変わらず尋常じゃない。ここまで読んだらやめよう、って思っても続きが気になっていや、あと少し読もう、って感じになる。それの繰り返し。こういう、証言だけで構成された作品は好きだ。

やはり何が読ませるかと言うと人間の悪意の部分。大学の外部生とか内部生とかの確執は別世界すぎてよく分からないけれど、女同士の嫉妬や見栄はよく分かるかな。被害者の田向さん夫婦のかつての人となりが、当時の関係者の証言で細部まで暴かれてゆく。ここまで育ちが良くて美人で性格がいいと色々あるね。本当に性格が良かったのか疑問になる証言もあるけれど、人って自分の悪い部分は隠すから真実はわからない。。夫も最初の証言では誠実な人柄に思えていたけれど、だんだん自分の為なら人を利用することも厭わない性質が浮き彫りになって来てこれまた不快。でも、これだけの年月が経っていてなお惨殺されるだけの理由があったとまでは思えない。。
合間に挟まれる謎の女性の独白も迫力。兄に向けて語られる女性の生い立ちの悲惨さに気分が悪くなるのはどうしようもない。

内容はこれぐらいとして、「第三の衝撃」という程ではなかったかな。。。貫井さんらしい仕掛けというにはパンチというか意外性が弱いというか。「慟哭」や「プリズム」ばりにもっとびっくりしたかったなあ。それでも、読ませる面白さで言えば今まで読んだ作品中トップかもしれない。

                             (298P/読書所要時間3:30)