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ロウフィールド館の惨劇/A Judgement in Stone  (ねこ4.2匹)

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ルース・レンデル著。角川文庫。

ユーニス・パーチマンがカヴァデイル家の一家四人を惨殺したのは、たしかに彼女が文字が読めなかったからである。ユーニスは有能な召使だった。家事万端完璧にこなし、広壮なロウフィールド館をチリひとつなく磨きあげた。ただ、何事にも彼女は無感動だったが……。その沈黙の裏でユーニスは死ぬほど怯えていたのだ、自分の秘密が暴露されることを。一家の善意が、ついにその秘密をあばいた時、すべての歯車が惨劇に向けて回転をはじめた……(裏表紙引用)


紅茶とミステリ、季節の花々をこよなく愛するTEAさんのブログで以前紹介されていた作品。ルース・レンデルは大昔に一冊だけ読んだ(「殺す人形」)記憶があるが、再び読む日が来るとは思っていなかった。TEAさんの記事を読んでゆきあやのカンが働いたのか、早速手配をしている自分がいたのである。

まずは出だしの一行が衝撃的である。
「ユーニス・バーチマンがカヴァデイル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。」

これは一体どういうこと??


本書は倒叙形式。冒頭からユーニスが善良なアッパー・ミドルのカヴァデイル一家四人を殺害した事が明らかとなっている。ユーニスは文盲ゆえに、なぜ雇い主一家を殺害するに至ったのか?ユーニスがカヴァデイル一家に雇われた経緯から、ユーニスが実の父親を殺害した過去を暴き、彼らとユーニスの良好な関係が徐々にユーニスへの不信へと移行していく様が神の視点で描かれてゆく。雰囲気はホラーと言っても過言ではなく、文字を読めない事を悟られないように策略を巡らし、おびえている姿が恐ろしい。眼鏡を作ったり、ここまでして文盲である事を隠さなければいけないのか?と読んでいて不思議に思えてならなかった。
元々日本に比べてイギリスの識字率は低かったはずだし、100%になったのは最近の事じゃないのかと乏しい知識で想像してみる。移民が多いんだし。。んー、よくわかんない。

しかしまあこれが面白いこと。後にユーニスの共犯となるジョーンの造形もすこぶる酷くて、魔女みたいだ。カヴァデイル一家が善良だからこそ、ユーニスには罪深かったんだろうか。ジャックリーンの鈍感さやミリンダのあっけらかんとした奔放さ、優しさが徐々に自分の死を早めて行くのかと思って読むとやりきれない。ジャイルズがもっとしっかりしていれば。。。ジョージがもっと威厳を持っていれば。。。いや、これはユーニスを擁護しているみたいだからやめておこう。彼女の異常さは先天性のものだったのか、境遇のせいなのかわからないけれど、この絶望的なまでの哀れさが頭に焼き付いて離れそうにない。原題を直訳するとなおさら、文盲であるが故に起こした犯行であり、また文盲であるがゆえに最初から運命は決まっていたんだなと厳粛な気持ちで本を閉じた。


TEAさん、面白い本のご紹介ありがとうございました!^^死ぬほど好みでした。
「ルース・レンデル作品集」が載っていたので集めて行こうと思いますです^^ブログばんざい^^

                             (286P/読書所要時間4:00)