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弥勒の掌  (ねこ3.7匹)

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我孫子武丸著。文春文庫。

愛する妻を殺され、汚職の疑いをかけられたベテラン刑事・蛯原。妻が失踪して途方に暮れる高校教師・辻。事件の渦中に巻き込まれた二人は、やがてある宗教団体の関与を疑い、ともに捜査を開始するのだが…。新本格の雄が、綿密な警察取材を踏まえて挑む本格捜査小説。驚天動地の結末があなたを待ち受けます。 (裏表紙引用)


今更?という声が聞こえて来そうだが、2010年1発目の読書はコレである。我孫子さんと言うと自分は「殺戮~」ではなく腹話術人形・マリオや速水3兄弟が浮かんでしまうので、我孫子さんにこういうダークな警察小説があったのかと驚いた。しかし、新本格作家として一度は名を馳せた我孫子さんだもんでやはり普通の警察小説にはないサプライズや仕掛けが待っている。それなりに話題になった作品であるし、好みではなかったが「殺戮~」での手腕は確かなものであったし、現在もミステリファンに変わらぬ支持を得ている作家である状況を鑑みて、この煽りは大袈裟ではないのだろう、と多大な期待を持って読んだ。

そして読了。”驚天動地の結末”を体験してみての感想。
やはりどこを探しても成り立ってしまう仕掛けの隙の無さである。ミステリ読者は読めば読むほどトリック慣れしてしまうものだから、頭が真っ白になるほどの驚きというものはさすがに遠い昔に置き去ってしまった。それでも登場人物の人となりも伏線と成り得るのであれば、まだまだミステリ作家には未来に拓くものがある。しかし今回のように、好印象を持てない人物が横並びする作品には背負うデメリットも大きいように感じた。やはり自分は根っからの綾辻派である。

                             (292P/読書所要時間2:30)