若竹七海著。集英社文庫。
一戸建てを二人でシェア、料理さえ作れば家賃はタダ。そんなおいしい話を見逃す手はない―。というわけで、気はいいけれど変わり者のお嬢様・銀子さんの家に居候することになった私。しかし、引っ越し早々、幽霊は出るわ、ゴミ捨て場の死体騒動に巻き込まれるわ…なぜかトラブルが続発。郊外の平凡な住宅地を舞台に、愛すべき、ちょっと奇妙な隣人たちが起こす事件を描くミステリ短編集。 (裏表紙引用)
クリスマスに読みたかったのだが当日すっかり忘れていた。まあ、内容的にはクリスマスクリスマスした感じではなかったので良しとしよう。と、言うわけで久々の若竹さん。
本書はまた若竹さんらしい日常ミステリー。
シリーズものではない(よね?)作品だが、それを可能にしそうなキャラ作りと舞台設定はさすが。最初はなんだこの幽霊の要素は、と苦笑したが(笑)、読み終わった後でもまだわからない。一体あの幽霊はなんだ。放置されて終わったぞ。正体も経緯も分かったのでとりあえずこれでいいんだろうが、ラストあたりで上手く共存しているシーンぐらいは欲しかったぞ。連作を得意とする若竹さんらしくない
じゃないか。
まあそれはいいとして、ジャンルはほのぼの日常系なのにさすが若竹さん、ちっともなごませてくれない(笑)。人の悪意と世の中を達観した登場人物がちょろちょろと人情話にすら顔を出して来る。明確な悪意というものに滅多にお目にかかれない世の中だからこそ攻撃の矛先を向けられず人は苛立つのだというくだりには膝を打った。ちょっと口の悪い、ヒロインらしからぬ語り手や男まさりで歯に衣着せない友人・夏見がこういう作品にはよく似合っていて、”いい子いい子”した主人公よりも自分は身近に感じられる。統一感がなく、連作としてはあまり出来はいいとは言えないが、要所要所がツボに入って好みのタイプの作品ではあった。今年の読み納めとしては自分らしい良い選択をしたかな。
(239P/読書所要時間2:00)