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月曜日の水玉模様  (ねこ3.9匹)

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加納朋子著。集英社文庫

いつもと同じ時間に来る電車、その同じ車両、同じつり革につかまり、一週間が始まるはずだった―。丸の内に勤めるOL・片桐陶子は、通勤電車の中でリサーチ会社調査員・萩と知り合う。やがて2人は、身近に起こる不思議な事件を解明する〈名探偵と助手〉というもう一つの顔を持つように…。謎解きを通して、ほろ苦くも愛しい「普通」の毎日の輝きを描く連作短篇ミステリー。 (裏表紙引用)


うおお!(ノ><)ノさすが加納さん、ええ作品やないか~。ほんとに自分にとってはハズレのない作家さんだぁ。こんないいのを読みこぼしていたとわ。。。平凡なOLさんと、ちょっと変わった若いサラリーマンコンビを主人公とした連作日常ミステリー。

『月曜日の水玉模様』
陶子と萩、出会いの物語。陶子がいつも同じ時間に乗る電車、いつも乗る車両で、、いつも同じ席で眠っているサラリーマン。曜日ごとに決まったネクタイをしている彼だが、その規則性が破れたとき。。

『火曜日の頭痛発熱』
風邪気味で企業の診療所を訪れた陶子。同じく居合わせた萩も風邪のようだ。薬を受け取り会社に戻った陶子だが、見知らぬ男性と薬袋が入れ替わってしまい・・!?
会社がらみで小さな事件が起きる、陶子の好奇心がうずき、萩がリサーチをする、という関係性が出来て来た。いいねえ、萩くん。久々の萌えキャラだわ。

『水曜日の探偵志願』
うおおお!!
そうだったのか萩くん!!!
ペリイ・メイスンファンにはたまらないお話であるし、陶子と萩くんの関係にニヤリとする嬉しい秘密が判明!こりゃただの連作ものじゃないぞ。

『木曜日の迷子案内』
か・加納さん・・・!!!
自分が良い短編集だと思う条件のひとつは、1つの作品を読んだ後思わずページを閉じてぎゅっとしたくなること。普通の平凡だと思っていた陶子に、意外な過去が判明。小さな迷子事件が、人間同士の絆というものの真実を浮き上がらせたこれは傑作だ。
「大事なものは、手を放しちゃいけない、絶対にいけない。」

『金曜日の目撃証人』
陶子の勤め先との取引関係がある鳴海物産の女性は、無理難題を押し付ける性格。またしても間に合わない配送をごり押しされた陶子だが。。
窃盗事件と、オフィスの日常である小道具がうまく機能して素敵なドラマが生まれた。
これは、陶子と萩が探らなければ誰も気付かないような些細な人生劇場だったね。ホロリ。。

『土曜日の嫁菜寿司』
陶子さん・出張編。萩くんの出番なし。新幹線内で起きた女性たちとの出会いと小さな謎。小粒な作品ながら、陶子にとって人生の転機ともなる事態が待っていた。。。
これは驚きましたね。こんな出会いってある?陶子、これからどうなる?

『日曜日の雨天決行』
接待ソフトボールに参加した陶子と萩が解き明かした企業の犯罪。
試合シーンはナニを書いているのやらさっぱりわかりません(野球音痴^^;)。。いい感じで終わりたかったんだけどねえ。
陶子とあの人との関係、気になりますね。萩とはお似合いだし、陶子もまだまだ若いし、人生立て直すのは遅くないよ。


以上。
長編みたいな気分で読んだ。企業に勤めた事がある女性ならば共感出来る部分が多いんじゃないかな。
会社での若い女性社員の立ち位置などなど。会社勤めって自由にならないし生活は単調だし我慢も多いし辞めたくなる事も皆あるだろうけど、一旦でも退いた事のある自分には少しわかる。あのレールの中の生活が、理不尽に縛られた毎日が、どんなに自分を社会的に守ってくれていたか。
が、作品自体の雰囲気は極めて癒し系。温かさの中にある厳しさもヒリッと痛い。自分の求める加納さんがこの一冊に凝縮されている。加納作品の中でも1、2を争うお気に入りになった。続編も楽しみにしよう。

                             (259P/読書所要時間2:00)