すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

災厄の紳士/Dead Trouble  (ねこ3.7匹)

イメージ 1

D・M・ディヴァイン著。創元推理文庫

根っからの怠け者で、現在ではジゴロ稼業で糊口を凌いでいるネヴィル・リチャードソンは、一攫千金の儲け話に乗り、婚約者に捨てられた美人令嬢のアルマに近づく。気の強いアルマにネヴィルは手を焼くが、計画を仕切る”共犯者”の指示により、着実にアルマを籠絡していく。しかしその先に思わぬ災厄が待ち受けていた……。名手が策を巡らす、精巧かつ大胆な本格ミステリの快作!(裏表紙引用)


1970年代に活躍していた作家だそうだ。
翻訳が現代的なので、時代設定を古くした現代作品と言ってもばれないかもしれない。
ここ数年のランキング本常連作家で、常に大型書店では平積みされているのでずっと気になっていたが、先日愛するあねきが本書を記事にされ、重い腰を上げた。3作いずれもノンシリーズ作品で、敢えてお薦めするならコレだそうだ^^(←言いなり)

そして本書読了。やはりあねきは慧眼をお持ちである。モロ好みだったぜーー!!(ぜー)(ぜー)
女性主観で読むと憎めない悪役のネヴィルに、騙され役はいかにも世の中楽しければ最高がモットーの
アルマ。アルマに翻弄されるネヴィルのモノローグは極悪非道極まりないが、どことなくコミカルな感じがドロドロしさを排除している。ネヴィルの真の狙いは何か?フレデリクス家とヴァランス家の確執とは?通常ならば長編でもプロットはこれだけで事足りる。本書が巧緻なのは、その謎を解明しつつさらなる事件の第2章へ突入してからである。なるほど、それで”災厄の”紳士か。

明かされる第一の犯人と、「真の」犯人。アルマの姉・サラが主婦探偵として情のある筋の通った推理を展開するのが好ましい。本当に感想で言いたかった事が真相がらみだったので何も言えなくなったが(笑)、これはもう読んでもらうしか面白さを伝える方法はない。
退屈しない文章、人間ドラマの機微、本格ミステリが揃った良い作品な~い?これでまだ足りないならもう読む本ないよ。

                             (347P/読書所要時間3:00)