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ミスター・ディアボロ/Mr.Diabolo  (ねこ3.7匹)

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アントニー・レジューン著。扶桑社ミステリー文庫。

西洋学研究学部の裏手を通る“悪魔の小道”。そこはかつて、一人の学生がシルクハットにマント姿の怪人と遭遇した末に首を吊ったという因縁の小道だった?。学会の夕食会の席上、この恐るべき逸話が披露された直後、伝説の“ミスター・ディアボロ”と思しき人影が中庭にたち現れる。“悪魔の小道”に飛び込んだ人影は、衆人環視のもと忽然と姿を消す。さらにその夜、密室状況で死体が発見され…。カー顔負けのけれん味と、華麗なロジックを兼ね備えた、知られざる60年代本格の逸品、遂に登場。 (裏表紙引用)


本書は「2010本格ミステリ・ベスト10」海外部門第8位の作品である。ランキング勢の中で自分が”一番知らない”作家だったので買ってみた。海外ランキング本は文庫が多いので助かるのである。
知らないと書いた通り、作者については解説通りの情報しかないが、元々このアントニー・レジューンは批評家兼ジャーナリストだそうだ。ミステリ作品については本書しかないとのこと。残念。

さて、この『ミスター・ディアボロ』。
舞台はイギリスだが、登場人物はアメリカ人も多い。語り手のアリステア・バークは外務省所属で、恋人のバーバラ(大学研究員)と、アリステアの友人である探偵役のブレーズ(陸軍省)と共に事件を捜査する。他の登場人物も、大富豪、医学者、軍人、学者、弁護士などなど、なかなかのインテリ揃い。彼らの粋な会話も楽しみどころの1つと言える。
なんと言っても本書の主役は「ミスター・ディアボロ」なる怪人で、派手な装いに神出鬼没の振る舞い
はかの二十面相と張る迫力だ。消える先々で衣装を落として行くのもユニーク。マントは警察の調べによると自作だそうだ(笑)。

ミステリ的にはどうかと言うと、前例のあるトリックがやはり目に付く。犯人特定や密室のロジックは常道だが、人間消失トリックや人間関係の逆転劇など、意外と評価すべき点が多い。雰囲気は最初から文句ないし、ロマンスが効いている所も好みだし、海外古典ファンも安心して挑戦出来る作品ではないだろうか。

                             (307P/読書所要時間2:30)