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粘膜蜥蜴  (ねこ4匹)

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飴村行著。角川ホラー文庫

国民学校初等科に通う堀川真樹夫と中沢大吉は、ある時同級生の月ノ森雪麻呂から自宅に招待された。父は町で唯一の病院、月ノ森総合病院の院長であり、権勢を誇る月ノ森家に、2人は畏怖を抱いていた。〈ヘルビノ〉と呼ばれる頭部が蜥蜴の爬虫人に出迎えられた2人は、自宅に併設された病院地下の死体安置所に連れて行かれた。だがそこでは、権力を笠に着た雪麻呂の傍若無人な振る舞いと、凄惨な事件が待ち受けていた…。 (裏表紙引用)


前作『粘膜人間』のあまりのエログロぶりに、世界観の完成度よりも嫌悪感の方が勝ってしまったわたしはこの続編を見ないふりをしていた。が、本書は今年のランキング本で二度も十位内入りをしている。もしホラーのランキング本があれば一位だったんだろうなー、と今本書を読み終わって強く思った。ちなみに前作とは繋がりがありません。

ホッとしたのは、エログロ要素が控えめになっていたこと。勿論ホラーなのでそれなりのグロシーンは多々あるが、”蜥蜴人間・ヘルビノ”自体の造形が極めて人間に近かった。本書に登場する雪麻呂や阿片王・野間などの狂った人々に比べ、ヘルビノ族は外見以外は常識的に見える。ヘルビノ語が妙に可愛くて萌えるし^^:「ぷりぴょー、ぱぴんきゃる」「ぴきょれろ、るんぴぃっ」とか。こういうセンスは前作から凄いよね、この作家さん。そういうユニークな要素が存分に発揮されているのも本書の特徴になっていて、雪麻呂が性○をする側で太鼓を叩きながら応援歌を歌う富蔵がさいこう^^;;

『フレフレぼっちゃん、フレフレぼっちゃん、ナイスボーイの憎い奴』
『カチカチ○○○○、ビンビン○○○○、雪麻呂ぼっちゃん日本一』とか(笑)なんやねんこれ^^;

ヘルビノだけが物語を創っているんじゃなくって、第一章では雪麻呂の屋敷と病院に学友達が招待されて、そこで隠れた兵士達(こいつらも狂っていて面白い)とある事件を起こしたり、死体置場守り人の不気味な趣味がひけらかされたりと、雰囲気満点。
第二章では舞台をナムールの密林に変えて、雪麻呂の学友・真樹夫の兄がゲリラと闘いながら任務を全うしようとする物語が。ここで戦時中ならではの狂った人間性や、気持ち悪い生物との格闘が描かれている。第三章からはまた雪麻呂が中心の物語となって、恋愛が忍傷沙汰に発展するなど怒濤の展開に。

なんとなく、物語の核がバラバラなので感想も纏めにくい。。タイトルの「粘膜蜥蜴」も合ってない気がするし。
最終的にはヘルビノが関わって来るのだが、ラストで驚きの真相が明らかにされる。それを踏まえて物語を遡ってみると、なんともはや悲しい物語なんだなあ。。。完全に設定とキャラ立ちの勝利。
るんぴぃ~~~~~(T_T)ノ

個人的には前作よりずっと面白かった。ランキング本もたまには役に立つね。とか言って^^

                             (376P/読書所要時間4:00)