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ここに死体を捨てないでください!  (ねこ3.9匹)

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東川篤哉著。光文社。

「死んじゃった…あたしが殺したの」有坂香織は、妹の部屋で見知らぬ女性の死体に遭遇する。動揺のあまり逃亡してしまった妹から連絡があったのだ。彼女のかわりに、事件を隠蔽しようとする香織だが、死体があってはどうにもならない。どこかに捨てなきゃ。誰にも知られないようにこっそりと。そのためには協力してくれる人と、死体を隠す入れ物がいる。考えあぐねて、窓から外を眺めた香織は、うってつけの人物をみつけたのであった…。会ったばかりの男女が、奇妙なドライブに出かけた。…クルマに死体を積み込んで。烏賊川市周辺で、ふたたび起こる珍奇な事件!探偵は事件を解決できるのか?それとも、邪魔をするのか?驚天動地のカタルシス。 (あらすじ引用)


             ~あねき、べる氏へ捧ぐ~

こりゃ褒めざるを得ませんな。

ユーモアミステリというのは合間にギャグを挿み物語やキャラを面白可笑しく描く事によりミステリへの傾倒を示すもので、1つの立派なジャンルである。しかしその軽さは殺人事件には両刃の剣で、死者への哀悼を表さず被害者を茶化したようなキャラクターの行動や言動(警察、探偵含め)は読み手によっては不快感を喚起する。終始お笑いに徹していても、謎を解くすなわち犯人を捕まえるという1つの目的が存分に読者に伝われば、優れた読み物になるのだと言う事を本書から教わった。それはイコール、正義が何であるかという価値感がブレていないからである。
さらに、トリックが素晴らしければという条件が付くが。

その点も本書は抜かりがなく、充分に犯罪現場の地理と犯罪者心理に向かい合った傑作と言えよう。
相変わらず東川氏らしい派手なトリックが用いられるが、今回は”リアリティの欠如”という作者の弱点を、具体的な社会実例を持ち出す事によってクリアしている。ラストの犯人との攻防は圧巻で、悪は必ず滅びるという作者の信念が見えるようだ。


そして今回、砂川警部の部下・志木刑事がとことん哀れである^^;
川に流されながら「警部うううぅぅぅーー俺、これで終わりっすかああぁぁぁーーー」(落下)の名場面を演じた彼には何か賞品を差し上げたい^^;;;;
さらに、かずら橋で犯人と対決するという緊迫シーンでの「ちっちゃいエグザイル」にゆきあやから今年の名場面大賞を捧げよう。笑い死にさせる気か^^;;;;

そういうわけで、最初の50ページまでの間に
「軽い交通事故はアウトで死体遺棄はアリなのか!?」
「人目に付いてはいけないエレベーターで衆人環視の中本名を呼ぶか!!」
「親しい間柄と言え他人に軽卒に依頼人の名前を教える探偵が居るか!」
「他では慎重なのに、廃棄業者からコントラバスケースなんていう目立つものを堂々と手に入れようとするのは何故だ。。」
・・・・・・という事ばかり目に付いてぶちギレしそうになっていた事は水に流しましょう。


別に東川作品だけに思うところがあるのではなく、それでもやはり自分はユーモアミステリは苦手なのだ。だから、どんな傑作でもねこ点はこれが限界なんだと思う。
最近、重い悲しい作品にうんざりしつつあるので、たまにはこういうのもいいかなとは思う。充分丸くなったよね^^:

                             (320P/読書所要時間3:00)