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武家屋敷の殺人  (ねこ3.7匹)

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小島正樹著。講談社ノベルス

探偵役は、若き弁護士とリバーカヤック仲間のフリーター。孤児院育ちの美女が生家探しを弁護士に依頼に来て、手がかりは捨てられたときに残された日記くらいだと言う。具体的な地名はいっさい出てこない代わりに、20年前の殺人と蘇るミイラの謎が書かれた日記をもとに調べ当てると、思わぬ新たな殺人が起こる。最後のどんでん返しまで、目が離せないジェットコースター新感覚ミステリー。 (裏表紙引用)


『十三回忌』でも思ったんだが、この作家さん、結構損をしていると思う。
本格ミステリ好きには必ずウケる舞台装置、理詰めの推理、最後の最後まで気を抜けないどんでん返しという三大武器を備えているのに、だ。

まずはキャラクターがおかしい。
「無礼、無愛想、無表情」の三無い男、邦彦が主要探偵。頭脳は明晰で運動神経も良いようだが、無礼を通り越してデリカシーがない。若い女性を「あの女」と呼ぶ時点でこいつはアウトだと思った。古今東西、態度がでかく我が道を行く無愛想な探偵は数居れど、その多くの探偵がミステリ読みに愛されて来たのはどんな変人でもそのデリカシーだけは持ち続けているからである。
さらに、弁護士の川路に魅力がない。この彼も随分優秀な頭脳をお持ちのようだが、一人称が「わし」という時点でファンは獲得出来ないと思ったほうがいい。さらに、誰に対しても語尾に必ず「~っす」「そうっす」を付けるので苛々する。

あとは、構成の問題。
第1章で謎の90%を解決する邦彦(すげえな)。第2章では怜子が事件の記憶を遡って語り続ける。
この第2章が一番面白かったが、いかんせん、長い。そして手記の真相がほとんど明らかとなり、たった1つの大きな死体移動の謎だけが残されてしまう。第3章からは川路と邦彦が瑞希の生家へ向かい謎を解こうとするが、また新たな謎が発生。さらに終章では。。と、とにかく盛りだくさんの割にバランスが悪い気がするのである。とにかく目を見張る真相が用意されているので、ここまで読み手のテンションを惹き付けておけるかどうか。

そして、個人的には伏線のわかりやすさ。
本書を読みながら、メモ帳に気になる点を4、5つ書き出しておいたのだが。それが見事に全部、伏線であったのだから驚く。これは自分がカンがいいのではなく、誰でも「なんで?」と思うような要素だったりするのである。常識的に考えておかしい行動は、良い伏線とは言い難い。何度もイラッとしたのが損した気分だ。


・・・と、またしても文句が出揃ってしまったが、総合的には良いのである。本格好きならお薦めしたいと素直に思う。。。いや、ほんとに。

                             (370P/読書所要時間4:30)