すべてが猫になる

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消えた玩具屋/The Moving Toyshop  (ねこ3.7匹)

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エドマンド・クリスピン著。ハヤカワ文庫。

月光に誘われ、深夜オックスフォードの町を逍遥していた詩人キャドガンは、ふと一軒の玩具店の前で足を停めた。開け放しの戸口に興味を惹かれ中に入った彼は、一人の女の死体を発見した。余り愉快な光景じゃない、そう想った瞬間、彼は頭部に一撃を受け気を失った。翌朝、意識を取戻したキャドガンの視界から、昨夜の玩具店は跡形もなく消え失せていた。彼は、年来の友人であるフェン教授に事情を話し、手掛りを求めて町を彷徨い始めるが……大学の町オックスフォードを舞台に繰拡げられるユーモアとウィットとサスペンス。英国ミステリの白眉。(裏表紙引用)


クリスピン2冊目~。
もねさんといちプロさんにお薦めいただいた作品。案の定、府内最大の図書館でも見つからずS市から取り寄せてもらった。皮肉な事に、S市は地元である^^;嬉しいんだけど、この手の古い文庫ってボロッボロなんだなぁ^^;;読んでて悲しくなる程真ッ茶色。あげく、命日は何十年前だよと思うほど干涸びた大きめの蚊が栞のごとく挟まっていた^^;;ぐぇぇぃ。これからマニアックな古い本は全国のネット古書店で取り寄せようと堅く誓うゆきあやであった。


まあ、それは前振りとして、内容は勿論状態に関係なく良いのである。
探偵役のフェン教授の自由すぎるキャラクターだけでもう大成功なのである。キャドガンを交わす言葉遊びは勿論、作者クリスピンの為に作品の売り文句まで考えてくれるのである。捜査は強引で人を操るのが上手い。正義の為に事実のもみ消しを許さないという一面もあり、最後まで真相を明かさない頑固さも自分勝手さを補ってあまりある魅力だろう。
事件そのものもかなり面白い。おかしな金持ちの老婆が、遺産を譲る相手は他人ばかり。唯一の身内である姪には、ある期日までに名乗り出なければ相続権を放棄したと見なすというとんでもない婆さんなのだ。その候補者達にはそれぞれニックネームがある点もユーモラス。

ミステリとしては平均といったところか。玩具屋というところに面白い理由があればもっと良かったし、本格にしては真相解明がドタバタすぎて丁寧さに欠ける。どこに重点を置いてもそれなりに楽しめるので、ちょっとした偏屈ミステリ読み向けかも。ファルス系としてはバークリーに負けていないと思うので、復刊してもらえないかなあ。『Xに対する逮捕状』の復刊が決まったみたいだけど、やっぱり
マクロイみたいにそういう「読めなかった」作品の方が優先されるんだろか。

                             (296P/読書所要時間3:30)