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嘘神  (ねこ3.8匹)

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三田村志郎著。角川ホラー文庫

愛する弟を失ったコーイチは失意の日々を送っていたが、高校で初めて友達と呼べる仲間たちと出会った。しかし、ある朝目覚めると、5人の仲間と出口のない部屋にいた。「嘘神」の声が非情なゲームの始まりを告げる。ルールは7つ。しかし、嘘神の言葉にはひとつだけ嘘がある。与えられた水と食料はわずか。仲間の命を奪って脱出するのか、それとも…。若き新鋭、驚愕のデビュー作!第16回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。(裏表紙引用)


ケータイ小説だと知っていたら買わなかったのに。

読んでいて絶望的な気分になる稚拙な文章、稚拙な会話、稚拙な場面の洪水にあっぷあっぷしながら、
それでもスラスラと一気に最後まで読めた。ジャンルはシチュエーション・ホラー。『CUBE』『ソウ』+『カイジ』の亜流といったところか。よって、この設定自体に嫌悪感をおぼえる人向きではない。彼らをどういう手段で連れ去り閉じ込めたのかとか、水と食料が勝手に「ぶおん」と現れるのはおかしいという事に引っ掛かっては読めない小説。そりゃ気にはなるが、本体そのものがしっかりしていれば普通は受け入れてくれるもの。

まあそれはそれとして、個人的にはこの系統は大好きだ。
嘘神のルールに1つだけ嘘があるという設定や、彼らそれぞれに与えられた謎の道具(トランプやハサミなど)の使い道など、細かく考えられていてワクワクする。語り手が次々変わり、1人1人の思惑や本心が読み手に明らかであるのも飽きさせない手法だ。
閉じ込められた6人は元々仲良しグループ。男女3組でカップルとなっており、お互い親友という関係を築いている。そんな仲間が極限状態にあって、一番に考えられるのは自分か、恋人か、全員か。
空腹と閉塞状態が引き起こした仲間割れ、騙し合い、生き残りゲーム。それぞれの本性は読み手に剥き出しではあるが、その中にちょっとした言葉の仕掛けがあり、プロ向きのテクニックを感じる。
ラストのオチがあの映画のパクリだった事はガッカリしたし、嘘神の嘘ルールの真相は肩すかし。生き残った人物が最後に下した選択も、心情的には納得行かない。子供ってやつは。。。

作者は大学生だそうだが、作中にある狂暴さと(性描写が残酷すぎる)精神的未熟さがアンバランスだ。要は登場人物がバカ。読んでいて全員イライラする。青い人生観と自己中心的さ。彼ら全てが背負う過去の回想にはほんとにこいつらいい加減にしろ、と本を投げつけたくなった。

その全てが、ルールの為の、仕掛けの為の設定だとわかるからこそ悔しくもある。是非大人に読める作品も読ませて欲しい。子供の方が賢いんだなあ、という出来にならなかったのが残念なのだ。設定が高校生だったからゆえの評判の悪さではないと思うんだよな。。

                             (399P/読書所要時間3:00)