ジョン・スコルジー著。ハヤカワ文庫。
コロニー防衛軍のなかでも勇猛果敢で知られるゴースト部隊の隊員は、防衛軍に志願したものの、軍務につくまえに死んだ地球人のクローンで構成されている。だが、新たに部隊員となったジェレド・ディラックは、天才科学者ブーティンの遺伝子から作られたクローンだった。恐るべきエイリアン種族と手をくんだ裏切り者ブーティンの情報を得るべく誕生させられたディラックの熾烈な戦いと数奇な運命を迫真の筆致で描く話題作。 (裏表紙引用)
ゆきあや絶賛の『老人と宇宙』に続く第2弾。
前作の、「老人が志願兵士となって若い身体を手に入れる」物語はとりあえず終了となっていたようだ。この続編では老人ネタは脇に寄せられていて、随分前回とは内容が違う。しかし、老人じゃなくなった途端につまらなくなったと感じるかどうかはここに何を期待するかどうかだろう。
前作の持ち味ともなっていた「個人の誇り」が健在であった事が何よりも嬉しい。科学者ブーティンのクローンでしかないジェレドが、コロニー防衛軍の狙いを外れて自我を持っているのが楽しめる要素だろう。クローン達と共に、意識や情報を共有し、SF映画や小説のブームが起こるくだりもユーモアがあって最高だ。人類に優れたユーモアがあると豪語する人物とジェレドのやり取りが笑える。
後半は他種族との戦争がメインとなっている。ブーティンは何ゆえに裏切り者となったのか?ジェレドにブーティンの意識は宿るのか?ジェレドと共に闘い育った仲間との死別や幼いゾーイとの心の疎通など、泣かせどころもたくさん。コロニー防衛軍が意外と冷酷だったりして、ジェレドの純粋さが際立つ。
ああ、ジェレド・・・。。。好きだったのに。。
クローンの運命は決まっていても、魂はそこにあったんだね。
そして物語は続く。希望あるラストに感動しつつ、第3弾で懐かしのジョンに会いましょう。
(463P/読書所要時間4:00)