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大聖堂は大騒ぎ/Holy Disorders  (ねこ3.9匹)

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エドマンド・クリスピン著。国書刊行会。世界探偵小説全集39。

オルガン奏者が何者かに襲撃され、不穏な空気が漂うトールンブリッジの大聖堂で、巨大な石の墓碑に押し潰された聖歌隊長の死体が発見される。しかも事件当時、現場は密室状況にあった。この地方では18世紀に魔女狩りが行なわれた暗い歴史があり、その最中に奇怪な死を遂げた主教の幽霊が聖堂内に出没するとも噂されていた。ディクスン・カーばりの不可能犯罪に、M・R・ジェイムズ風の怪奇趣味、マルクス兄弟スラップスティックをミックスしたと評される、ジャーヴァス・フェン教授登場のヴィンテージ・ミステリ。 (あらすじ引用)


ぶひ~~~
おもしろかった~~~~~(>ε<)v

初挑戦のエドマンド・クリスピン。さっさと読んでおけば良かった~~~。
これこれ、こういうのを探していたのよ!!
本格ミステリとは少し毛色が違う作風。コミカルな文体とコントのようなキャラクターの掛け合いとは裏腹に、事件の真相そのものはきっちりと重い。事件の異常さ、おぞましさ、不可思議さ。対照的に、
語り手ジェフリイを筆頭とするキャラクター達のどたばた感がいいコントラストを出している。

とにかく物語の始まりからして最高。
作曲家のジェフリイを呼び出したのは、友人の素人探偵・昆虫学に精通している?ジャーヴァス・フェン。人を呼び出しておきながらいきなり行方不明、やっとの初登場シーンは初期御手洗潔もびっくりの狂人ぶり。電報にあった「補虫網入用」との意味不明な要求を見て、絶対おかしい奴が出て来ると予想していたが、ここまでとは(笑)。ジェフリイは比較的まともなキャラクターであるが、道中知り合った百貨店員・フィールディングもかなりいいキャラをしている。ジェフリイに補虫網を売った人物であるが、突如仕事を辞めてジェフリイについて来るのである。。こいつが意外にもなかなかいい活躍をするからわからないものだ。

しかし、終始ふざけているわけでもない。
コミカルさの中に、おぞましさや戦時中の逼塞感はきっちり埋め込まれている。奇行が目立つフェンも、事件に対しては真摯に向き合っている。警察の協力(逆か、笑)も友好的だ。ジェフリイも、大聖堂で”遅すぎた春”がやって来る。やはりロマンスの要素があると嬉しいね。
そして、本書の魅力はやはり終盤の捕り物劇。時代背景と舞台装置の魅力を考えれば決してユルいなんて言葉は使えない。笑い、謎、涙、悲劇。すべてがバランスのいい熱さをもって、満足度の高い作品。
クリスピン、他のも読もう!

                             (304P/読書所要時間3:30)