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無貌伝 ~夢境ホテルの午睡~  (ねこ3匹)

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望月守宮著。講談社ノベルス

怪盗・無貌…それは世界が畏怖する生ける怪異。探偵・秋津とその助手・望は、宿敵無貌逮捕の報を受け、夏原ホテル?別名「夢境ホテル」へと向かった。そこには、殺人鬼探偵をはじめ、一癖も二癖もありそうな宿泊客ばかりが…。やがて、ホテルの一室で刺殺死体が発見される!探偵たちを嘲笑うかのように繰り返される殺人。「夢境」の彼方に隠された事件の真実を、望は追う。 (裏表紙引用)


「無貌伝」シリーズ、早くも第2弾。
第1弾が軒並み大好評だったので、待望の続編と言ってもいいだろう。無貌被害者である秋津探偵と、
孤児でありなりゆきで助手となった望の第2の物語である。ミステリとしても、キャラものとしても
新人離れした力を持っていると確信した作者だが、早くもこの第2弾でハズしたと言ってもいいのではないか。

前作で気になっていた文章力は当然上がっており、ヒトデナシが支配する「夢境ホテル」の設定はやはり素晴らしい。月曜日、火曜日と夢の世界ならではの異質な空間が演出されていて、その条件下で発生する殺人事件という事で読むほうのテンションも自動的に上がる。
だが、今回は仕掛けが一部不発だった。三探偵もいらないだろう。ただでさえ医者の闇手術や秋津の妻との進展や老婆誘拐など、内容がてんこもりだというのに、さらにここに望と元サーカス仲間・健太の邂逅やヒトデナシ政治詐欺などが加わるのだ。その配分や構成は見事であるのに、肝心の真相がおとなしくおさまるところにおさまっただけに過ぎず、肩透かしもいいところ。

秋津が相変わらず出番がほとんどないのも困ったもんだ。主人公は望だと判断したとしても、主要キャラが仕掛けのコマにされてしまうのには頭を抱える。
これはミステリーではない。”人が死ぬファンタジー”だ。

続編の予告が華々しくなされているが、次回は様子見にさせてもらおう。。だって、あと5つはヒトデナシ世界があることになってるのよね^^;

                             (380P/読書所要時間5:00)