すべてが猫になる

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三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人  (ねこ3.7匹)

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倉阪鬼一郎著。講談社ノベルス

「4月9日(金)午前0:20にお越しください。お目にかかれるときを楽しみにしております。黒鳥館主人」招待状を手に東亜学芸大生・西大寺俊は黒鳥館と名づけられた壮麗な洋館に赴く。招待客は全員無作為に選ばれたという。ウェルカムドリンクを主人から受け取った西大寺は、館内の完全な密室で怪死。呪われた館を舞台とした凄惨な連続殺人の火蓋が切って落とされる―。復讐のため建てられた館で繰り広げられる大惨劇。 (裏表紙引用)


久々に倉阪さん。昔は割と読んでたんだけど、駄作と傑作の差が凄い上にあまり反響もなさそうなので疎遠になっていた。本書は9月に出たノベルス新刊で、お仲間さん内で割と評判が良いみたい。

うん、これは面白い。
わざと稚拙な文章で機械的に描かれた本書は、本格ミステリの仕掛けだけに徹底的にこだわったと見られこれもある意味計算である。執事はあくまで典型的な執事らしく、被害者達は徹底的にあっさりと殺され、あくまでそれだけの役割でしかない。倒叙となっているので、犯人の語り口も芝居がかっていて雰囲気がある。こういうのも実は大好きである。作家・倉阪鬼一郎の自虐ネタも笑いと悲しみをさそう。

出来はと言えば、作者が「悶絶しながら描いた」と言う気合い通りに見事なもの。元々バカを狙って描いたバカはバカではない、という持論のあるゆきあやですらこの真相には吹いた。うっとうしいぐらいの膨大な伏線とユーモアに富む小道具使い。1つ1つを無駄にせず、伏線の全てが笑いへと移り変わっていく様は感動すらおぼえる。個人的には「ロリン」がツボに入った。

あと、誤解なきよう。別に自分はわざとゲラゲラ笑っていないのではない。バカミスの定義に縛られてもいない。ただ、バカだと思わなかっただけである。面白いよく出来たミステリだと思った。そういう意味ではやはり自分は自覚している通りバカミスハンターではないんだろう。

                             (194P/読書所要時間2:00)