すべてが猫になる

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DINER  (ねこ4.2匹)

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平山夢明著。ポプラ社

ひょんなことから、プロの殺し屋が集う会員制ダイナーでウェイトレスをする羽目になったオオバカナコ。そこを訪れる客は、みな心に深いトラウマを抱えていた。一筋縄ではいかない凶悪な客ばかりを相手に、カナコは生き延びることができるのか?暗躍する組織の抗争、命がけの恋―。人の「狂気」「恐怖」を描いて当代随一の平山夢明が放つ、長編ノワール小説。 (あらすじ引用)


平山さん、小説の新刊出さないのかなあと思っていたら、いきなりド迫力の長編が出た。長編は昔『メルキオールの惨劇』で失神しているので不安だったが、ファンの評判がいいので買ってみることに。
うーん、表紙がかっこいい。背表紙の題字もゴールドで凄いのよ^^

というわけで。
やはり1ページ目から流血とドン底の世界。血が、悲鳴が、肉片が乱れ飛ぶ。文章の暴力の嵐、嵐、嵐。自分がいきなりこの世界にポイッと放り出されたら1分も持たないだろうなー、的な拷問と凶器と優しさのカケラもない人々。ダイナー(アメリカ風定食屋)にやって来る常連の殺し屋達もいちいち個性的で、生い立ちの悲しみと殺しの衝動を抱えギリギリの人生を生きている。シェフであるボンベロの命令は絶対で、味方もいない戦闘術もない素人のカナコがどこまで持ちこたえられるだろうか。。

はっはっは^^;;平山さん、容赦なーし。
それでもやはりそこはしっかりとしたエンタメ小説で、理不尽さの中にも設定としての骨格がちゃんとある。これだけの悪鬼の中にいれば感覚がおかしくなってしまって、ボンベロが一番まともに見えるのかもしれないし胃袋をがっしり掴まれてしまったのかもしれないが。だって本当に美味しそうなのよ、ボンベロのハンバーガーとスイーツ。。グロと美料理のコントラストが食欲をそそっているのだとしたら凄い作家だが。ボンベロの「ありがとうってなんだ!!」には思わず涙してしまった。誤った世界で、一つの愛が誕生した瞬間を見た。

                             (470P/読書所要時間3:30)