すべてが猫になる

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老人と犬/Red  (ねこ3.8匹)

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ジャック・ケッチャム著。扶桑社ミステリー文庫。

老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年が三人近づいて来た。中の一人は真新しいショットガンをかついでいる。その少年が老人に二言三言話しかけたかとおもうと、いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅した。老人がはした金しか持っていないと判るや、その少年は突然、銃を犬に向けて発砲し、頭を吹き飛ばした。愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。笑いながらその場を立ち去って行く少年たち。あまりにも理不尽な暴力!老人は“然るべき裁き”を求めて行動を開始する。 (裏表紙引用)


ケッチャム3冊目。読むたびに、二度と手を出さないようにしようと誓うのだが。。こうなったら毒を喰らわば皿までも。(←違う)『老人と宇宙』も読んだ。『老人と犬』も読んだ。残すは『老人と海』だな。読む順番が明らかにおかしいが。

本書はケッチャムにしては普通の内容だという噂を聞いた。
老人の可愛がっていた犬を銃殺し高笑いをする少年。
母と兄弟を惨殺した老人の息子。
実の息子が乗る車に時速100キロで追突する父親。
腐敗した犬の死骸を掘り起こし・・・(言えない)する老人。
読んでしまうと、どこがやねんと突っ込まずにいられない。「若干、マシ。」と言う方が的確だろうて。絶望と共に本を閉じる事がなかった、という意味では異例なのかもしれないが。

相変わらず、凄惨な内容ながらも文章は乾燥しており、読みやすい。老人を語り手に配したためモラルを問う事すら出来る。犬が死んだ時でさえ涙を流さなかった老人が、ラストで初めて見せた涙の理由。
彼の復讐を名目とした孤独との闘いに光明が射すこの作品、出来としてはやはり凄いものがあるが、どこかで物足りなさを感じている自分が居ないか探してみたりもする。うん、大丈夫。

                             (270P/読書所要時間2:30)