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クライム・マシン/The Crime Machine  (ねこ4匹)

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ジャック・リッチー著。河出文庫

殺し屋の前に自称発明家が現れた。自分の発明したタイム・マシンで、殺害現場を目撃したという―表題作「クライム・マシン」、妻の消失に秘められた巧妙な犯罪計画を描くMWA賞受賞作「エミリーがいない」ほか、全14篇。軽妙な語り口に奇抜な発想、短篇ミステリの名手ジャック・リッチー名作選。 (裏表紙引用)


ジャック・リッチー2冊目~。前回読んだ『10ドルだって大金だ』がとてもとても良かったのでこちらも読む気満々だったのだが、タイムリーな事に文庫が出た。ばんざい。買うのは早かったが読むのは後回しになってしまった。。いつでもサクッと読めると思うと^^;昨日ねこりんさんのところで記事にされていたのに触発されて、いそいそと読了。
やはり期待に違わない傑作のオンパレード。作品数が多いので、特に気に入ったものをご紹介。

『クライム・マシン』
入れようかどうか迷った感じではあるが(笑)、表題作であり、リッチーのコミカルでブラックな作風、ミステリとしてのひねりが利いた代表すべき作品なので外せない。自分の犯罪を全てタイム・マシンで観察されていた男が、その発明者に恐喝されるというお話。これはタイム・マシンの存在を信じられるか、男の話に信憑性があるかどうかが全ての鍵。自分はこれは嘘で、何らかの企みがあるか、本当でSF的なオチになるかドキドキしっぱなし。いやはや、ちょっと笑っちゃうなあ、この顛末^^;

『ルーレット必勝法』
必ずカジノでバカ勝ちをする男と、経営者の男の頭脳戦。果たして必勝法は本当にあるのか?それともイカサマ?作品内では一番手口に感心した作品。それだけで纏めず、片方の男の末路も同時に描くのが凄い。これがオチの天才と呼ばれる由縁か。(そう呼ばれているかは未確認、笑)

『歳はいくつだ』
三編目。作風が少し変わり、4ヶ月の余命宣告をされたある男の生き様を描いた作品。いやいやいや、こういうの大好き!!この事件を発端に、世の中がマナー天国になるというのがブラックだ。そしてこの黒い結末に、二重の意味を持たせているのが憎い。

『日当22セント』
無実の罪で投獄され、4年後に釈放された男。復讐すべきは自分を陥れた奴らだ。。。
復讐劇かと思いきや、まさかこんなどんでん返しがサラッと(笑)。どこかで見たオチかもしれませんが、思わず手を打ってしまいました。見事。

『殺人哲学者』
気に入ったものだけご紹介、とほざきながらここまで収録順に感想を書いている自分が笑える。。だって、どれも外せないんだよう~~~^^;;;わずか数ページの掌編。スカッとするオチだがやはりブラック。かっこいい。

『エミリーがいない』
これがかの有名な(自分は今知ったが、笑)MWA賞受賞作!一番楽しみにしていたが、やはりただ事じゃなかった。途中までは、ある真相を予測していたが、、とんでもない、こりゃ絶賛されて当然。
単なるおどかしじゃなくて、売れどころは確固たる論理と心理だね、リッチーは。

『記憶よ、さらば』
文庫新収録!さすがの出来映え、記憶喪失になった男と彼に絡む犯罪物語。企んでいるのは誰?騙されたのは誰?


以上^^
しかし読了して驚愕しました。。。『10ドルだって~』で出会ったトンでもシリーズキャラ、カーデュラものが入っていないーーーーー!!!!どうやら、文庫化にあたり削除されたもよう!!ショックじゃ~~ショックすぎる~~~~(ToT)。。。。ターンバックルものは2編入っていたのでホッとしたが。。文庫を買って小躍りしていたゆきあやにこの仕打ちはヒドい。。。(カーデュラものはまとめて出版されるらしいが。。。しくしく)

しかしそれにしてもジャック・リッチー凄いなあ。勧善懲悪でありながら、決して正義に偏っていないブラックさがいいと思う。心情的には共感しつつ、良心の部分でツッコミが入る。読者を手玉に取っている感じ、好きだなあ。後の『ダイアルA~』も読まねば。

                             (336P/読書所要時間3:00)