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余は如何にして服部ヒロシとなりしか  (ねこ3.8匹)

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あせごのまん著。角川ホラー文庫

クリクリとよく動く尻に目を射られ、そっと後をつけた女は、同級生服部ヒロシの姉、サトさんだった。ヒロシなら、すぐ帰ってくるよ―。風呂に入っていけと勧められた鍵和田の見たものは、緑色の張りぼての風呂桶。そこに裸のサトさんが入ってきて…。ゆっくりと自分が失われていく恐怖を描く、第12回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。 (裏表紙引用)


当時スルーしていた本なのだけど、先日桜庭さんのエッセイで褒めているのを見て読んでみました。
タイトルの意味不明さ以上のペンネームセンス。。これはノーコメントで。。

『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』
表題作だけに、一番奇妙で存在感のあるお話。一体どういうお話かを説明しようにも、まったく↑あらすじ通りのお話です。。なんというか、文章が悪いというよりリズムが良くないね。描きようによってはもっとスムーズに取り込まれるものだったと思うけど。卑猥な言葉が多用されていて、不条理で独特の日本の田舎らしい雰囲気を持った作品となっております。わずかに嫌悪感が。。^^;溜めていないお風呂に入る鍵和田とサトさんや、ママの不気味さが印象深いかな。あとはなんのことやら。
で、結末が現実的。だからさ、新人なんだから上手にまとまっちゃダメだって思うの。
まあでも、ヘンなお話がお好きな方ならこれを。

『浅水瀬』
試験日当日、バイク事故を起こして谷底に落ちた青年。大怪我で身体を動かす事もままならないまま、ひたすら救助を待つ。そこへ次々と、”善意の目撃者”がやって来て彼に語りかけて来るのだ。。
ああ、もう、表題作よりこっちの方が断然いい。
文章が流れるように行かないのはもう横へ置くとして、スタンダードな怪談としてなかなか雰囲気が出ていたのでは。特に、老婆のお話が怖かったね。。
しかしラストは。。。
正統派ホラー好きの方はこれを。

『克美さんがいる』
養母の葬儀後、お金の事しか考えない非常識な嫁が見つけたものは、養母が遺した悪意のノートだった。。
タイトルの意味がわかるのは終盤。別にミステリ的な展開がなくてもその前の段階の方が充分面白味があった。仕掛けがあるわけではないので、やられた感はあまりない。
とにかく嫁姑の諍いや、お金お金で頭がいっぱいの醜い人間模様が気分が悪いを通り越して笑えるレベル。しかしこれ、克美さんという名前の読者からクレーム来ないのか?
不愉快なドタバタ劇がお好きな方はこれを。

あせごのまん
土佐弁で描かれた怪奇もの。読みにくすぎる。。。
ペンネームの由来が判明。「阿瀬郷」の「まん(化け物)」という意味だそうです。でもそれを何故ペンネームにしようと思ったのかは不明です。売れる気ないな。
二番煎じというか五番煎じくらいの題材なのだけど、まあ悪くはない。
岩井志麻子さんがお好きな方はこれを(笑)。


ねこ点は、2、3編目に対して与えられたものだと思って下さい。
総合的には何か一つ二つ突き抜けた感がないけど、かなり好みでした。書評を廻ったのですが、あまり評判は宜しくないようです。そういうのを読むと、いや、結構面白かったけどなあ、と思うぐらいには。褒める方が難しいんだろか。

                             (190P/読書所要時間2:00)