すべてが猫になる

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螺旋階段のアリス  (ねこ3.7匹)

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加納朋子著。文春文庫。

大企業のサラリーマンから憧れの私立探偵へ転身を果たした筈だったが―事務所で暇を持て余していた仁木順平の前に現れた美少女・安梨沙。…亡夫が自宅に隠した貸金庫の鍵を捜す主婦、自分が浮気をしていないという調査を頼む妻。人々の心模様を「不思議の国のアリス」のキャラクターに託して描く七つの物語。 (裏表紙引用)


加納さんの未読本もそろそろ片付けて行かないとね^^
一番未読で気になっていたのは『月曜日の水玉模様』なんだけど、こちらのシリーズも悪くなさそうだと思ったら、やっぱり素敵でした。この作家さんはハズすって事を本当に知らない。

主人公の設定がなかなか見られないものだったので、良かったです。
『転身退職者支援制度』って初めて聞きました。一種の解雇なんでしょうけど、なんだか恵まれているような。
50代のおじさん探偵が主人公とは思えないほど(失礼)、爽やかで温かいタイプの短編集でした。もちろん、ワトスン役の安梨沙の雰囲気と人柄が大きいのですけど。仁木が50代っていう設定は知っていて読んでいるのに、彼女と居ると若者のようですね。うっかり設定を忘れて「この二人くっつくのかな~」とか思っていた(笑)。どちらかと言うと、娘を想う父の関係ですよね^^

ミステリとしてはいわゆる”日常の謎”系で、殺人事件は起きません。日常と言っても、誰にでも起きる事件ってほど身近なものではなくって、それは犯罪であったり、スレスレのものであったり、家庭のイザコザであったりします。タイトルの表す通り、「不思議の国のアリス」をモチーフにしたお話ばかりなので、そういう面での楽しみ方も出来ますね。そして、仁木の隠された背景や、安梨沙の謎のプロフィールについて色々ドラマを交えて、長編のような纏まりを見せてくれるのです。しかし、仁木ってそれほど個性はないのにそれを感じさせないのはさすがだ。文章力の成せるものでしょうか。

続編があるので、そのうち入手しよっと^^♪

                             (286P/読書所要時間2:30)