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ぼくらの気持  (ねこ3.7匹)

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栗本薫著。講談社文庫。

年収なんと二億五千万円の人気少女マンガ家が殺された……。「ぼくらの時代」のKTV連続殺人事件から二年経ち、ヤスヒコは今少女マンガ雑誌の編集者。彼の担当のマンガ家が惨殺され、嫌疑は彼にかけられる。我らの薫と信の二人は親友の無実を証明すべく真相究明に乗りだす……。<「ぼくらの時代」Part2>(裏表紙引用)


「ぼくら」シリーズ第2弾~。
乱歩賞受賞作の第1弾がなかなか良かったので、「続編もなかなか良い」と評判の(あねき語る)第2弾を読んでみました^^。
もう第2弾ともなると、時代の古臭さが気持ちいいぐらいになって来ますね。ヒーコにとんでる女にバータレ等々死語、死語、死語のオンパレードです^^この時代を描いた小説、漫画が全部こんな雰囲気なのかと言うと絶対そんな事はないわけで、この特色は貴重なものでしょう。

バンドを組んでいた三人組も大人になって、留年中の薫、信はともかくヤスヒコはいっぱしの社会人。今回このヤスが事件の中心となるわけですが、それが少女マンガの世界というのですから面白いですね。薫と信が「ホ○系の人」として演技をさせられるのが笑えて笑えて^^;親友を信じて、彼の冤罪を晴らそうとする二人には胸が熱くなりますが、同時に過ぎてしまった時間などに思いを馳せ、時には弱気になりヤスを疑ってしまうシーンが挿入されているのがまた良いのです。
また、本格ミステリについて講釈を垂れる薫もかっこいい。時代によって、動機も変わるという言葉は真実ではないでしょうか。たった2、3万のお金のために、ちょっとむしゃくしゃしていた為に容易に刃物を持ち出すこの時代、薫ならどんな推理を展開するのでしょうか。

馴れ合いのようで決してそうではない、だけど裏切る事を知らない、このシリーズの魅力は間違いなくそこにあり、そして物語として決して優しい側面ばかりを提示しない所も栗本さんの地位を確立するのに重要な要素だったのでしょう。

                             (321P/読書所要時間3:00)