すべてが猫になる

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グリフターズ/The Grifters  (ねこ3.7匹)

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ジム・トンプスン著。扶桑社ミステリー文庫。

グリフターズ―詐欺師たち。口先たくみに人をだまして、小銭を稼ぐ男ロイ。だが、今日は運悪く見やぶられ、ひどく殴られてしまった。ロイが適切な処置をしなければ、彼の命はあと3日…ロイがこんなふうになったのは、14歳ちがいの若い母親リリイの影響だ。そしてロイには、もうひとりの女性モイラがいる。この3人がLAに集うとき、運命はもつれ、愛憎と欲望はからみあい、先の見えない悲劇が転がりだす…ノワールの鬼才ジム・トンプスンが放つ、悪党どものドラマ。 (裏表紙引用)


以前、唯一の短編集である「この世界、そして花火」をのけぞりながら読んで以来お気に入り予報発令中の作家・トンプスン。いよいよ長編にトライ、というわけで発行年の若いものから手をつけてみました。

いやはや、これほどタイトルと中身のイメージが違う作品もそうはないのではないでしょうか。”グリフターズーー詐欺師たち”という視覚に訴えるシンプルで迫力ある表紙の映画予告のような雰囲気は完全に裏切られ、ここにあるのはせこい詐欺を繰り返し生計をたてる青年・ロイと、倫理観の狂ったテレクラ母・リリイ、ロイの恋人モイラが織り成す人生の淡々とした一幕。もっと大掛かりな、警察やマスコミが動く犯罪の行く末を見守るスリルあるストーリーかと思った人は自分だけではないでしょう。
変と言えば変な雰囲気を持った小説なのですが、コレと言って小説にしてもいいような何事も起こらないんですよね。死後やっと評価され邦訳が出版されたというトンプスンですが、そりゃコレじゃ売れんわ^^;

しかし、ゆきあやのツボをくすぐる作品でした。特に、いってしまっている母親のリリイのキャラクターと対照的な、ロイの意外な「社会貢献」への一歩。ここで何を躊躇する事がある?と自分なんかは思うのですが、生まれながらのアウトサイダーの価値観というのか、ここが作品の個性でしょうね。
だけど母親の呪縛からは逃れられない。
後半に突入するまでは、それでもどこにノワールの要素を見出していいのか疑問でしたが、ラストで全部持って行かれました^^;こりゃいいわ、真っ黒だ、希望も正義も愛情もどこへ行った?^^;;

次は評判の良い「おれの中の殺し屋」「ポップ1280」に挑戦。きっともっと黒いぞ、楽しみだ^^

                             (251P:読書所要時間2:30)