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林檎の木の道  (ねこ3.5匹)

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樋口有介著。創元推理文庫

十七歳の暑く単調な夏休み、広田悦至は元恋人の由実果が、千葉の海で自殺したことを知る。事件の日、渋谷からの彼女の呼び出しを断っていた悦至。渋谷にいた彼女がなぜ千葉で自殺を?再会した幼なじみの涼子とともに事件を調べ始めると、自分たちの知らなかった由実果の姿が、次第に明らかになってくる―。悲しくも、爽やかな夏の日々の描写が秀逸な、青春ミステリの傑作。 (裏表紙引用)


あねきに”読まなくてもいい”宣言をされた三大積読樋口本の一つ。
と言われても、持ってるものはいつかは読まなくてはならんのだ、すまん。先に片付けないと「夏の口紅」とか「なんとか探偵事務所だ」とか買えないのよ。

しかし、まあ、本書は必読までは行かなくとも「魔女」ほどの失望感はなかったと思います。
樋口さんらしい、達観したクールな主人公・悦至がなかなか好みでした。高校生にしてはあまりにも冷め過ぎな気はしますが、これが樋口物語の個性だもの。多くを語らず、行動あるのみ。一番人としてカッコイイ人物像なのでは。死んでしまった元カノへの想いなど一ミリも残っていないと嘯いて、随所に見受けられる彼女に対する”評価”、これこそが真のセンチメンタル。あらゆる場面で嫌われていたわがままなスター志望の女の子が、彼と付き合っていたというだけでちょっといい子に映ってしまうのが樋口さんならではの恋愛表現でしょうね。

それにしても、今に始まった事ではないとは言え、他のキャラクターですよ。誰か身近な人が亡くなった事を聞いての反応が「へーえ」とか、そんな人ばっかりなのはやはりおかしいです。お通夜で「あの子人気なかったから」と大笑いする女子や、死んだ理由を詮索してお笑いにする男子など、どう考えても人の死に対する現実感がない。かつて自分が高校生の時に事故死したクラスメートがいたのですが、ふとその事を思い出してしまいました。そういえば、親しい人ほどこんな感じだった気がする。
あと、高校生なのに親公認でビールを飲みまくっている悦至ってどうなの^^;あとあと、出て来る女性の汗の匂いとかいちいち表現しなくていいから^^;;

ミステリ的にはほどよくまとまっていたのでは。「魔女」ではそこでへこまされてしまったから、とりあえずほっと胸を撫で下ろすわたくし。
さて、残りは「パッとしない」という評判(あねき語る)の「風の日にララバイ」。今度のは間違いなくハズしそうですね。^^;

                             (341P:読書所要時間3:00)