すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

甘い毒/Sweet Poison  (ねこ3匹)

イメージ 1

ルーパート・ペニー著。国書刊行会。世界探偵小説全集19。

全寮制のアンスティ・コート校では最近、校長の甥を狙った事件が続発していた。さらに青酸とチョコレートの紛失事件が発生、危険を感じた校長はヤードに調査を依頼した。紛失した毒物が発見されて、事件はひとまず決着したかに見えたが、一月後、ついに毒入りチョコレート事件が……。作者はすべての手がかりを提示し、完全なフェアプレイによって読者に挑戦する。わずか8冊の傑作を遺して消息を絶った謎のミステリ作家ペニーの幻の名作。(あらすじ引用)


おっと、期待しすぎたか。
「世界探偵小説全集」読破するぞー!宣言をしたわたくし、いざ有言実行ということで気になっていたルーパート・ペニーを読んでみました。目次だけを見ても、「第一章 殺されなかった少年」「第二章 殺された少年」というようにシンプルだけどインパクトがあります。さらに、読者への挑戦状が挿入されているということでワクワク度もアップ。
基本的に好みのタイプの小説ではありました。英国人らしい教師達や生徒、刑事。想像かきたてる風景、派手さはないけど知的さにこだわった本格探偵小説です。

が、結果としてここで挙げるならば長所より短所の方が多かったな。
本作で最重要な人物と思われる被害者と予測される少年・エドウィン自身があまり表に出て来なかった事。周囲の評価だけでもかなりの悪ガキのようで、エピソードも沢山出て来ます。彼の人柄を知るのに不足はないほどでしたが、もっと彼自身の言葉や動く様子などが欲しかった。
動機については予想の範囲内でしたが、あの人物を犯人とするならやはり違和感が残る。こんな手の込んだ殺人を実行するほどのきっかけや切羽詰まった事情があったとは思えない。この動機を生かしたまま、もうワンプロット必要だったのでは。人間関係を紐解いてもそこは同じだと思う。
探偵役が、ビールなのかトニーなのかいまいちわからない。ミステリーの常道を考えればトニーだと断定出来そうなのだけど、ビールなのよね?ていうか、ワトスン役が後から登場してどうするの?^^;


えーと、別に気に入らなかったわけではありません。しかし、「傑作」ではないと思います。他に7作クイーン国名シリーズの影響を受けたとされる作品がずらずらと存在するようです。。。って、邦訳出てるのコレだけですか。。。だったら解説で全ての著作を長々と紹介されても^^;それとも、今後続々と出してくれると期待してもいいのでしょうか。

                             (315P/読書所要時間3:30)