すべてが猫になる

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月光亭事件  (ねこ3.7匹)

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太田忠司著。創元推理文庫

引退した名探偵・石神法全の後を継いで探偵事務所を営む野上英太郎の元に、ある日猫を連れた少年が訪れる。卓越した推理力を持つその少年・狩野俊介は、石神との出会いを契機に探偵を志していた。野上は彼を助手として、直後に舞い込んだ依頼?大病院の院長の妻に取り入り、一家の館に居座る奇妙な宗教家の正体を暴くこと?に乗り出すが。少年探偵・狩野俊介シリーズ第一弾。 (裏表紙引用)


おおぉっ。いいじゃない^^
太田さんが創元推理文庫!?というわけで、プラス表紙に惹かれて購入。少年探偵ものって好きなのよ~^^しかも、にゃんこ付き(アビシニアン)だし(*^^*)。

探偵の元へ弟子入りする少年、という設定自体は目新しいとは感じないのだけど、一つ一つの細かい設定は行き届いています。ちょっとパッとしないように感じる(すまん)野上さんをカリスマ的な探偵に据えるよりは、石神法全という探偵の大御所をバックに控えさせた方が絶対にいい。かと言って、法全そのものをメインに出しちゃうと俊介とのバランスが悪い。こういうとこうまいですね、太田さん。

しかし俊介の抜群の推理力には舌を巻きますね~。コナン君とはまた逆のキャラで、こちらの少年は堂々と大人以上の推理を披露して周囲をどんびきさせております。が、探偵というものは知っている事や曖昧な事を口に出すべきではない、という教えに従いだんだん俊介が謎めいて来るのがいいです。
俊介の生い立ちはかなり不幸ですが、本人がしれっとしていて、自覚がないように描かれている。でも、これだけ頭のいい子が哀しさを知らないはずがない。泣くべきところで泣き、引くべきところでは引かない、まだ幼い彼の強さいじらしさが随所に見受けられて好感度かなり高し。
途中からアキちゃんという女探偵?が活躍し始めたあたりは「こんなキャラ必要ないんじゃない」と思ってしまったのですが、事件に重要な役割を果たしてくれてなかなか良くなって来ました。

導師消失のメイントリック自体は自分が元からあまり好きではないやつでしたが、死体が磔にされていた謎や、犯行方法の巧みさなど、読みどころが多かったです。少し対象年齢が低めなのか、俊介が最初からこだわっていた誕生日や○○の真相は最初から見当がついていて、ことごとく想像のままでした。そういえば事件に関わる手毬唄が物語中出て来ますが、「2番知りたかったらパソコンで検索すりゃ一発じゃん、横溝じゃないんだからさ~」と思ってしまっていた自分を嘲笑うかのように、うまいこと処理してましたねえ。

しかし作風やキャラクターがとても優しくて、気に入りましたね~。気に入っていると言いながら一年に一冊ペースでしか読んでいない新宿少年探偵団よりこっちの方が好きかも。このシリーズ、コンスタントに毎月文庫が出るようです^^楽しみが増えた^^

                             (316P/読書所要時間2:30)