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ローリング邸の殺人/In the First Degree  (ねこ4.3匹)

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ロジャー・スカーレット著。論創社。論創海外ミステリ34。

乱歩もその巧妙な手法に魅せられた、アメリカの本格推理作家スカーレット。数少ない作品中、未訳だった最後の一冊が満を持して登場。とある屋敷にて病死する主。その裏でほくそ笑むのは誰だ?未亡人、義姉、主治医、執事、そして親友を名乗る男…。それぞれの横顔が疑惑の影に覆われる。複雑に絡み合った怨念の糸を、ボストン警察のケイン警視が巧みに繙いてゆく。 (あらすじ引用)


ひゃっほぅ!!
完全なタイトル借りなのだけど、大当たりでした!それもそのはず、なんと帯には『乱歩「三角館の恐怖」の原作者』の文字が!アレが乱歩オリジナルじゃないのは大人になってから知ってはいたのだけど、原作までは手を出してなかったのよ~^^(ちなみに「三角館~」の原作は「エンジェル家の殺人」)”館もの”専門作家さんなんだって。そして、ロジャー・スカーレットというのはイヴリン・ペイジ氏とドロシー・ブレア氏の合作だそう。これは5作目ということで。

とにかく、ものすご~~~くストレートな正統派本格ミステリ。自分が知っているそれと違うなと思ったのは、登場人物が恐ろしく少ない事と、嘘みたいに読みやすい翻訳、コンパクトな本の薄さ。探偵役が警視というのも面白いですね。何がそんなにツボにはまったかというと、とにかく雰囲気。おどろおどろしい、ってほどではないけれど、外出しない住人、うさんくさい執事、怪しげな医者、一癖ありそうな病気の主人、探偵役を翻弄するつかみどころのない依頼人。館の外観や内装の描写もふるっていて、本格好きにはよだれものです。
友人のローリングが殺されると予言する依頼人のファラデーの言葉を疑いながらも、ローリング邸に下宿を始めるケインがいいですねー。窓から出ていたはずの「空室あり」の広告や、ケイン宛に送られて来た謎の本などなど、一筋縄ではいかない展開に胸が躍ります。

それにしても、正直、ナメていました。「でも、トリックとか犯人当てはゆるいんでしょ」という先入観がありました。ごめんなさい。凄かったです。数年ぶりにわたくし、左手で読んでいない行を隠しながら読むというのめり込みを見せてしまいました。(犯人の名前が目に入らないように)またまた、演出が憎いんですよね。論理的に消去して行って、ハイライトでばばーん!と犯人を紹介するという自分が一番弱いやり方です。思わず真相がわかるシーンでは「エーーーーーっ!!」と声に出してしまいました。バカミスでもアンフェアでもないんだからね。
たまたま自分が知らなかったパターンだったのかもしれませんが、これでも生まれてから1000、2000はくだらない数のミステリーを読んでいるわたくしです。これがいいミステリかどうかぐらいはわかるつもりです。これほど堂々とした伏線を張りめぐらして、真相を隠蔽する作品というのはもうそれだけで大好きになってしまう。


いやあ、もうやばい。翻訳ものめっちゃ楽しい。この論創海外ミステリのシリーズと世界探偵小説全集、読破するつもり。もしかして全部バークリーやこのスカーレット並みに面白いのかもしれないとか想像しちゃうと。。。うぎゃー。

                             (268P/読書所要時間2:30)