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地下室の殺人/Murder in the Basement  (ねこ3.6匹)

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アントニイ・バークリー著。国書刊行会。世界探偵小説全集12。

新居に越してきた新婚早々のデイン夫妻が地下室の床から掘り出したのは、若い女性の死体だった。被害者の身元も分からず、捜査の糸口さえつかめぬ事件に、スコットランド・ヤードは全力をあげて調査を開始した。モーズビー首席警部による<被害者探し>の前段から、名探偵シェリンガム登場の後半に至って、事件は鮮やかな展開をみせる。探偵小説の可能性を追求しつづけるバークリーが、様々な技巧を駆使してプロットの実験を試みた傑作ミステリ。(あらすじ引用)


しつこくアントニイ・バークリー。すべ猫開設以来類をみないスパンでお送りします。明日も2、3冊借りて来よう。「第二の銃声」またなかったら泣くぞ。

本書はロジャー・シェリンガムシリーズの7作目?連作の「最上階の殺人」(傑作らしい^^)より先に読んでしまった。。やっぱ何でも順番通りに読む方がいいね。シェリンガムが何だか偉くなってる感じだし、過去の事件の名前とかちょくちょく出て来るからいい気はしません^^;あのおバカ推理爆裂のシェリンガムは一体どこへ。。まともだ。。。まともすぎる。。。。

だけど、作品自体にチャレンジ精神がなくなり面白味がなくなっているかと言うとそんな事はありません。今でこそ珍しさはないけれど、構成が変わっていますね。まずは新婚夫婦が新居の地下室で発見した死体の章。そしてモーズビー警部が捜査を開始しシェリンガムに協力を要請する章。死体の身元から辿り着いたローランドハウス校に偶然過去2ヶ月勤めていたシェリンガムの小説の章。そしてモーズビーとシェリンガムの知恵比べから事件解決へ。
このシェリンガムの小説の章はかなり登場人物が入り組んでいて、メモを取らないと混乱します。誰と誰が仲が悪くて誰と誰が密かにくっついていてでも内心は誰がどうとか、あんたら全員学校の教師だろーー!!こんな殺意びしばしでいいのかーー!!!^^;;
そして、のっけから犯人の条件を完璧に満たしている人物が^^;満たし過ぎだろ怪しいにも程があるだろ!^^;;
そしてそして、シェリンガム、やっぱり最後やってくれました~^^;;;
なんなんでしょう一体、この自由すぎる探偵は^^;;;喩えるなら、悲壮感のない法月綸太郎

しかし、今思うと「毒入りチョコレート事件」の評価も考え直さないといけない気も。シェリンガムの個性はあの時から炸裂していたとしか考えようがない。。失敗する探偵、論理よりも人間心理を追求する探偵、とことんまでアンチにこだわった、この愛すべきシェリンガムの暴走。彼ならきっと、滝壺に落ちても生還はしないでしょう。

                             (278P/読書所要時間3:30)