すべてが猫になる

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ふちなしのかがみ  (ねこ3.9匹)

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辻村深月著。角川書店

ひややかな恐怖が胸に迫る―青春ミステリの気鋭が初めて封印を破った現代の怪談!おまじないや占い、だれもが知っていた「花子さん」。夢中で話した「学校の七不思議」、おそるおそる試した「コックリさん」。やくそくをやぶったひとは、だぁれ?その向こう側は、決して覗いてはいけない―。 (あらすじ引用)


辻村さんの新刊は、なんと初のホラー集。先陣を斬らせていただきます^^v(←宵山コピペ)
ホラー書庫に入れようか少し迷うぐらいの、ソフトな怪談。少し意地悪で、少し卑屈で、少し不思議な5編収録の短編集です。

『踊り場の花子』
一編目を飾るにふさわしい、一番怖かったお話。教育実習生だったチサ子と、教師相川の会話をメインに、さゆりちゃんの事件が意外な様相を呈してゆく。。。こわ!!!^^;;少しミステリの要素があって辻村さんらしい。けど、個人的にはホラーならもっとスパン!と終わらせて欲しかった気も。最後の最後に決め手は取っておいて欲しかった。

『ブランコをこぐ足』
ブランコから落下し、死亡した”みりちゃん”。彼女のクラスメート達がみりちゃんの思い出や、事件が起きた事情を告白していくが。。。
ちょっと出来が中途半端かなあ。「これは一体どういうこと?」と読者に想像を促す作品は好きなのだけど、それって「本当に意味がわからん」っていうものの事を指していないんだよね。

『おとうさん、したいがあるよ』
認知症の祖母の家を掃除するために、定期的につつじの一家は出向いてゆく。しかし、ゴミや汚い服の他に、死体が次々出現し。。
こういう、死体を前に常識とは違う反応、行動をするという設定はもう先に色んな作家さんがやってる。特に、乙一とは恐怖感が比べものにならないし。不条理に徹しているわけでもないし。展開は新しい方向へ行こうとはしているけれど、打ち破るまでは行かなかった。
悪くはないので、これが好きだという人もいると思うけど。

『ふちなしのかがみ』
ジャズクラブでサックスを演奏する高幡冬也に一目惚れした香奈子は、毎晩そのクラブに通いつめるが・・・。
先の↑3編で不満だった点が、この作品にはない。作風は違わないのに、こちらはきちんと不思議を恐怖にすり替える事が出来ているように思う。

『八月の天変地異』
身体の弱いキョウヘイとつるむようになってから、シンジ達はクラスで浮くようになった。悔し紛れに存在しないかっこいい”親友”をでっちあげたシンジだが。。
いかにも子供らしい発想の”身から出た錆”で、斬新ではないけれど次々読ませるお話。
これは良かった!!辻村さんらしく、子供がある出来事をきっかけに強く覚醒していくお話を、感動的に、哀しげに描いています。


以上。
愛ゆえにごちゃごちゃ書きましたが、概ね楽しめました。説明出来ないお話を否定はしないのですが、
「これはこういう設定だから」と割り切れないものって苦手ではあります。が、後半2編は大変気に入りましたね。さすが辻村さん、とホラーでも言えて良かった^^

                             (274P/読書所要時間3:00)