すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

蒸気駆動の少年/The Steam-Driven Boy  (ねこ4.7匹)

イメージ 1

ジョン・スラデック著。河出書房新社奇想コレクション

既存のタイム・パラドックスをあざ笑う表題作、スプラスティック・コメディ「古カスタードの秘密」、あの“四重奏”の荒唐無稽なパロディ「ベストセラー」、重力はないと“証明”する男の狂気を描く「月の消失に関する説明」、名探偵のサッカレイ・フィンやフェントン・ウォースが不可能殺人に挑む本格推理小説3篇、なぜか西部劇マニアな宇宙人が襲来する「ホワイトハット」、宇宙人が地球文化に溺れていく様を描く「おつぎのこびと」、グリム童話をさらに残酷に練り直した発禁寸前の「血とショウガパン」ほか、全23篇を収録。 (紹介文引用)

『最後の天才!』という賛辞がまぶしい、ジョン・スラデック奇想コレクション。正直ミステリ長編「見えないグリーン」を読んだ時は何も思うところがなかったのだけど、評判を信じて良かった^^「奇人、変人、天才」三拍子揃ったスラデックの短編集は、SF、ミステリごちゃごちゃ合わさった
怪作!「生涯奇妙な小説を書き続け、熱狂的なファンと大多数からの無視を得た」って、ひどいな^^;ゆきあやこういうの大好きなんだけど、やっぱ読者を選ぶんだー。。。

全部感想書きたいんだけど、なんせ23編もあるので特に気に入ったものをご紹介。

『古カスタードの秘密』
ゆきあやが図書館で借りて読んで、「これはやばすぎる!」と購入を決めた記念すべき1作。オーブンで見つかる赤ちゃん、取って食おうとする洗濯機、一見めちゃくちゃな世界を描いているようで、実は全てがある出来事の結果であったという。。脱帽。

『超越のサンドウィッチ』
賢くなる通信教育を宇宙人に勧められた主人公。別にサンドウィッチじゃなくても良かったのだけど、
どういう計画だよ^^;!!単純に計算すればそうなるような気がして来たぞおい^^;;

『最後のクジラバーガー』
腕しかない男と浮気中の妻とか、チンパン児とか、犬が公職に就くとか、もうそれだけで面白い作品でしたー。子供を育てない風習があったりとか、風刺色がきついんだろうね。

アイオワ州ミルグローブの詩人たち』
帰って来た宇宙飛行士を州で歓迎する、という集まりがあるのですがー。。。
めちゃくちゃになりまーす^^;;

『ピストン式』
ぎょえーー^^;;
新開発された車が、えーと、男性である事が判明してですね、あの、街中の車を○しまわって人間達がパニックになるという。。^^;;おもしろすぎる。。。性欲むんむんの車の○○の迫力といいますかその。。(何を書かせるー)

『見えざる手によって』
サッカレイ・フィンシリーズの密室ものです。何作かミステリが続くのですが、この作品が唯一まともだった^^;

ゾイドたちの愛』
ゾイド=ゾンビ?ホームレスゾンビのお話と言っていいのかな。本物人間という言い方が哀しげな感じ。

『おつぎのこびと』
地球へやって来た宇宙人の苦悩を描いた作品(笑)。七つの罪を惑星になぞらえたあたりが興味深かったですね。

『血とショウガパン』
残酷版・ヘンゼルとグレーテルです。
ヘンゼルとグレーテルが悪魔より酷く描かれています。。動物を残酷に殺したり、お世話になったお婆さんを虐待したりね。しかも救いのないラスト。かなり浮いている作品だと思うけど、元になっている世界というのは作者の中に必ずあるはずだから。

『不在の友に』
これは解説が面白かった(笑)。遊び心がありますね・・・あっ!(笑)←読めばわかる^^

『小熊座』
ブラック系が好きなもので^^テディベアそのものよりも、ジミーが怖く見えるのは凄いね。

『ホワイトハット』
せ、西部劇マニアの宇宙人~~~~~~~~~~~(笑笑笑^^;;)
宇宙人達、どこでいつ映画観たんだろう^^;;
この白い虫、気持ち悪いけど一遍体感してみたい。。

『教育用書籍の渡りに関する報告書』
こ・これは!!!本が飛んでいるよ!!!三崎亜記さんの「図書館」の元ネタってこれだったのか。
お話自体は別物で、こちらは外をばっさばっさ飛んでおります。

『おとんまたち全員集合!』
おとんま=現代の遊びすぎた大人、って事みたい。
風刺作品だそうだけど、働きすぎの日本人の感覚とは違いますね、やっぱり。失業をこんなに明るい感覚で捉えるっていう発想がもう。。

『不安検出書(B式)』
これは小説じゃなくて、ほんとに検出書が載ってます(笑)
なんやねんこれー^^;;こんなの書いてたら不安になるって^^;;


以上~。
中には「???」となってしまう作品もありましたが、挙げなかった作品も概ね好感触でした^^
作風としてはめちゃくちゃばっかりなんだけど、整合性があるんですよね。そうでなくても、作者の中にはバランスがあって。自分がもし、何も知らないさっき生まれた人間、とかだったら面白さを感じようがないというか。知ってる事、世界があるからこそ比較できる、発想を笑える、というこの作者の世界観が凄く愛おしいです。

                             (428P/読書所要時間4:30)