すべてが猫になる

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異人たちの館  (ねこ3.8匹)

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折原一著。講談社文庫。

富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。売れない作家島崎に舞いこんだゴーストの仕事?。女依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。この一家には、まだまだ秘密がありそうだ。五つの文体で書き分けられた折原叙述ミステリーの最高峰。 (裏表紙引用)


自分が唯一記事で堂々と”じょじゅつじょじゅつ!”とわめき散らせる作家、折原さん。
数ヶ月に1冊は折原さんが読みたくなりますね^^
叙述とはじめからわかっている叙述なんて、、とひねくれてみても、題材もどれも似たようなもので区別がつかないと揶揄してみても、物語自体が面白いのでやめられません。
まあ、本書も毎度おなじみ作家ネタでありますが、いつも以上に凝った構成となっております。作中作を挿入するのはいつもの手口ですが、本書は”五つの文体”が示す通り、語り手不詳のエピローグ、島崎の描く小松原淳の伝記、小松原淳の短編ミステリー数作、インタビューなどと目まぐるしく変わって行きます。ストーリーがきっちり動くうえ、練りに練った伏線だらけのミステリーとして読ませるにもややこしさが付きまとわない、そこが折原さんの凄さ。

前述した通り、叙述を叙述と先に知ってしまってはサプライズが半減すると思っているので、騙されたー!という気持ちはありません。だいたい折原さんの叙述は○○の錯誤がメインだと思っているので、色々パターンを予想していたものだから。○○が似てる人物が二人いるし、性別と○○が近い人物も二人いるし。でも、一つ一つの繋がりを復習していくとやはりレベルの高い作品ですよ。
 
                            (611P/読書所要時間5:00)