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弁護側の証人  (ねこ4匹)

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小泉喜美子著。集英社文庫

ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。しかし幸福な新婚生活は長くは続かなかった。義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。真犯人は誰なのか?弁護側が召喚した証人をめぐって、生死を賭けた法廷での闘いが始まる。「弁護側の証人」とは果たして何者なのか?日本ミステリー史に燦然と輝く、伝説の名作がいま甦る。 (裏表紙引用)


道尾秀介氏解説。復刊された事を悲しむぐらい、絶対に誰にも教えたくないぐらい、彼が敬愛している作品だという。本屋でパラパラと見てみたら、薄いし読みやすそうだったので連行してみた。
読みやすいと思ったのはある意味間違っていないが、妙に平仮名が多く逆に読みにくい。思ったほどの時代の古さは感じられなかったから良し。女性作家らしく、表現が綺麗。「茂るにまかせた茨やいらくさ」「燕麦が枯れてさやさやと風に鳴っていたら」など、風流な文章が目立つ。

いや、そんな事は実はどうでもいい。
杉彦みたいな男にどうして惹かれたんだろうとか、一見へなちょこ弁護士の清家のキャラが立ってないとかそういうお話ではないのだ。ストリッパー出身のミミイが八島財閥という身分違いの家に嫁いでからの家族達とのいさかいがめっぽう面白く、これが名作ミステリーと謳われている事を最初から忘れていた。普通にサスペンスとして読んでいたから、終盤から風向きがとてもおかしくなる事に気付く。
ハッ!と驚くサプライズというよりは、徐々に徐々に作者の仕掛けた罠が目の前に開けて行き、「あれ?あれ?あれ?あれれ?あれれれれ。。」という感じで謎が解けてゆく。自分が何にひっかかったのか、しばらくは化かされた後のような放心状態が続く。自覚してから要所要所を読み直し、「やられた!」と膝を打つパターンだろうか。

今となっても読み継がれる名作の名に恥じない、優れたミステリー。
これ、道尾さんがお好きっていうの凄いわかるなあ。
                    
                             (251P/読書所要時間2:30)