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毒入りチョコレート事件/The Poisoned Chocolates Case  (ねこ3.6匹)

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アントニイ・バークリー著。創元推理文庫

ロジャー・シェリンガムを会長とする「犯罪研究会」にゲストとして招いたスコットランド・ヤードの首席警部が持ち込んだ難問題。ロンドンのクラブに送られてきた新製品のチョコレートにより、毒殺事件が発生する。この一見単純な事件に対し「犯罪研究会」の面々が、次々と珍説、奇説を披露する。二転三転する真相。本格推理小説の醍醐味を満喫させる奇才バークリーの傑作長編!(あらすじ引用)


実は二度同じところで挫折しているこの古典名作、タイトルを知らない方はいないんじゃないかと言うほどの有名作ですが、読まれた方はどれくらいいらっしゃいますか。不運の被害者であるベンディックス夫人が死んで、その後で必ず眠くなり挫折していたゆきあやですが、今回そこを乗り越えるとなかなかすんなりいけました。

とにかく、同じ事件に対し、六つの推理が披露されるというのが凄い。それぞれが自分なりの情報を持ち、心理側から、物的証拠側から、はたまた両面から、さまざまな筋の通った推理を開陳してくれます。会員は皆作家であったり弁護士であったりとそれなりのインテリばかりなので、従来の探偵もののような、探偵役を引き立てる為だけのおバカ説みたいなものは出て来ません。着眼点が違ったり、情報が誤っていたり、自説に妄信的になってしまうだけで、どの推理も使えそうな感じがします。
かくいうわたくしも、七人目として自分なりのへぼい仮説を立てながら読んでみました。まあ、3人目で却下されるぐらいのレベルのものだったかな、と^^;作中、かなり面白い結論に飛んだ人物がいて大ウケしたのですが、そこからかなり白熱します。

しかし、面白い作品だな、と思ったのは、犯人の意外性云々よりも、真相看破するのアンタかい!というサプライズ。最後に発表する人物が有利なのは当然ですが、その人物のとったデータが実に役に立つ。

理論、理論でかなり堅い作品ですが、時折り挟まれる言葉の節々にユーモアもあり、現代でも通用する手法ではないか?と思えます。「薄バカ」とか「阿呆」という言葉が連呼されるのはどうかと思いましたが(どんな本だと言われそうですな^^;)。この作家の他の作品も気になりますな。既存を打ち破る事に関しての先駆者っぽいですが、果たして。