すべてが猫になる

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トワイライト★ミュージアム  (ねこ3.8匹)

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初野晴著。講談社ノベルス

天涯孤独な少年・勇介は、急逝した大伯父・如月教授が遺してくれた博物館で秘密裏に行われているあるプロジェクトの存在を知る。それは―脳死患者と時間旅行を研究する極秘実験。過去を彷徨う魂を救うため、勇介は学芸員枇杷とともに、過酷な時の旅へと出発する!注目の著者が放つ新感覚タイムトラベル・ミステリ。 (あらすじ引用)


だ~~~~~~~~~(T^T)
アルドゴンド~~~~~~~~~~(T^T)枇杷ちゃ~~~~~~~ん(T^T)←共感しすぎ
今回もやられました、初野さん新作。うぉぉぉぉ。。。

正直申し上げて、最初はそれほどはノレなかったのです。脳死患者というのも『水の時計』とかぶるし、(もし『水~』の葉月のキャラを掘り下げていたら枇杷ちゃんになってたと思う)タイムトラベルものは基本苦手だし。枇杷のキャラも、優しくて自己犠牲が凄くて、”何事にも他人のために堪える”といういい子ちゃんキャラだなあ、と若干苦笑気味。勇介も、ちょっと『水~』の主人公に境遇とか背景が似てるし。
ただ、構成が今までと少し違っていて読みやすかったかな。過去と未来の二部構成。時代は変わるけれど、現代ものの視点として時系列は入れ替わらない体裁なので。

ファンタジーですが、後半ちょっと変わったミステリー仕立てとなっているのが良かったです。魔女裁判が物語の核となっているのですが、まあ裁く側が悪で、枇杷と勇介側がそれを見抜く正義だと思えば良いでしょう。アルドゴンドに乗り移ってしまったナナちゃんの為に奔走する二人。その為には、魔女狩り将軍マシュー・ホプキンズ達の悪巧みを阻止しなくてはいけない。過去の少年に乗り移った枇杷が傷だらけになって、知恵を絞って健闘する姿は見るに堪えません。何も出来ない勇介の葛藤も見ていて息が詰まりますね。推理については現代の博物館員達の協力が不可欠ではありますが、その心の繋がりがこれまたいいのです。最初は大人と子供の温度差のようなものを感じていましたが、ラストで衝撃の事実が判明。その謎の氷塊と、過去でのスリル溢れる人情劇がダブルで襲って来ますからハンカチの用意を忘れずに。

欲を言えば、テーマが大仰なのにページ数が少ないように感じる事。単に面白かったから物足りなかったのかもしれませんが、この倍ぐらいあっても、シリーズとして7作くらい続いても嬉しかった気がしますね。なんとなく安定感が出来て来た気もしますが、多少冗長であってもネタを引っ張りまくっても
こんないいお話なら苦情は出ないんじゃないかな。