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どんがらがん/Bumberboom  (ねこ3.7匹)

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アヴラム・デイヴィッドスン著。河出書房新社奇想コレクション

空前絶後の輝かしい受賞歴をもち、キプリングやサキ、G・K・チェスタトンに比肩すると評されるアヴラム・デイヴィッドスン。この才気と博覧強記の異色作家が遺した短篇を、日本の誇る才気と博覧強記の作家殊能将之が編んだ傑作選。超兵器“どんがらがん”をめぐるピカレスクスラップスティックな表題作、完璧な短篇小説「ゴーレム」、ヒューゴー賞受賞「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」、MWA賞受賞「ラホール駐屯地での出来事」、世界幻想文学大賞受賞「ナポリ」、新本格ミステリ的な逸品「すべての根っこに宿る力」ほか、全16篇を収録。 (紹介文引用)


奇想コレクションに挑戦、2冊目。
全く知識のない作家さんですが、なんかすご~~く変な小説を読まされたぞ^^;↑上の経歴を見るだけで華々しく、ミステリ、SF、ファンタジーなんでもござれという感じ。解説によると、このデイヴィッドスンはエラリー・クイーンの代筆もされていたそう。

出だしの『ゴーレム』でまずノックアウトする。目の前にゴーレムがいるのに「人の話に入って来ないでよ!」と無視する老夫婦^^;必死で自分アピールをするゴーレムが哀れ^^;次の『物は証言できない』はうって変わって、奴隷制度、黒人差別社会を強者の側から描いた秀作。次はなんとSFの『さあ、みんなで眠ろう』。異星人虐待をさらに奥深くしたもので、異常なほど救いのない結末を迎える。
『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに』は、タイトルとどう絡むのかが気になる作品でヒューゴー賞受賞作。自転車屋さんが舞台で、SF的発想とホラー的結末で切れ味光る傑作。

『ラホール駐屯地での出来事』。これは背景を知らないとちょっと辛い。ミステリ的なオチと、人間の滑稽さには魅力を感じる。『クィーン・エステル、おうちはどこさ?』ある家政婦の人生劇場。ホラー的でもあり、ミステリ的でもあり、構成も展開も皮肉で好きな作品。続く『尾をつながれた王族』はこれまた滑稽なSF作品。逃げ出せないようにお互いの尾を結ばれている一族、これは面白いですね。

サシェヴラル』これはちょっと結末以外意味不明でした^^;と思ったら解説で”わざとわかりにくく書いてあるシリーズ”だそう^^;;『眺めのいい静かな場所』老人達の哀愁が生きています。『グーバーども』これは好き。わかりやすくはないけど、この少年ってグーバー以上?^^;『パシャルーニー大尉』すいません、これは途中から意味がわからなくなって来ました。結末はストレートに受け止めていいのかな?裏の解釈を考えようとするのは悪いクセなのかな。『そして赤い薔薇一輪を忘れずに』貴重な書物に魅せられた労働者の一幕、ってことでいいのかな。この結末、労働者と書物商?が入れ替わってたら面白かったのにな。『ナポリ』意味がわからなかったというか、確認のため二度読みしました。結局なんなの?口だけってこと?^^;

『すべての根っこに宿る力』『ナイルの水源』だんだんついて行けなくなって来たんです^^;もうちょっと国の背景とか文化を把握しないと読めない。注釈も多い。

で、メイン中編、『どんがらがん』。
わはははは♪この作品にたどりつくまでに挫折しなくて良かったです^^これは相当にヘンなお話。
大砲組一党「どんがらがん」って何かと思ったら、一度もその機械?を使った事のない部族が威張ってます、みたいな^^;まあ、発射時に「どんがらがーん」「どんがらがーん」って言うだけなんですけどね^^;なんだこりゃ、わはは^^;;;会話ややりとりもユニークです。挨拶が「ふむ」とか^^;「えへん、あはん」とかいちいち言わなくていいよー。
ああ、面白かった。どんがらがーん♪



途中結構苦戦しましたが、表題作で挽回してくれたので助かりました。殊能将之さん編集ってことだけど、わかる気もします^^;誰がどう評価しても異色作家だというデイヴィッドスン。原文は悪文でかなり翻訳に苦労したそうです。わりと読みやすかったので、相当頑張って下さったんでしょうねー^^;