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荒野  (ねこ3.7匹)

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桜庭一樹著。文藝春秋

恋愛小説家の父をもつ山野内荒野。ようやく恋のしっぽをつかまえた。人がやってきては去っていき、またやってくる鎌倉の家。うつろい行く季節の中で、少女は大人になっていく。 (あらすじ引用)


ファミ通文庫で『荒野の恋』として1、2で出ていたものに第3部が加筆修正され、改題して出版されたものだそうです。読みたかったんだけどファミ通文庫はちょっと^^;と思っていたので嬉しいですねえ。これだけで「漫画調」のイメージから「文学」になりますもんね。

やっぱり荒野12歳、子供以上大人未満の心の葛藤と身体の成長が丹念に描かれた第1部が圧倒的に面白かったです。どうして悠也に惹かれたのかその心理はいまいち伝わらなかったのですが^^;、まだ恋を知らない、性的なものを不潔だと感じる幼い頃。早熟なクラスメートや先輩に対しての心の壁。大切な人との理不尽な別れや、新たに闖入して来た家族。どれも桜庭さんらしい清潔感と危うさがあって、文章はシンプルで染み込みやすく素晴らしかったと思います。

変わって第2部。悠也とは文通で気持ちを伝え合うようになり、地味で目立たない荒野の周囲もざわつき始めます。クラスメイトの阿木君とのハラハラする交流や、養母容子の大人の女らしい激しさ、いやらしさがスリル満点でしたね。子供のままの荒野がじれったくもあり。それにしても荒野の父親はモテます^^;彼の愛人たちがこれまた大暴れ。妻も子供もいるおっさんにどうしてそこまで^^;

そして感動の第3部・・・ではありませんでしたが、なんだかサラッとまとまっちゃって肩透かしでしたね^^;悠也との交際にもっと波乱があると思ったし、奈々子さん出て来なかったし(好きだったのに!)。。。荒野もなかなかに大人になりましたが、こういうおとなしい終結にするならもっともっと先の未来(荒野20歳とか24歳くらい)を出した方が似合ってたんじゃないかなー、なんて。15歳でまるで人生割り切っちゃったみたいな女になっちゃってさ。おねえさんは哀しいよ。

うん、まあ、それなりに面白かったです。が。第1部が異常に面白くて、だんだんテンションが下がる、というパターンは前にもあったんですよね。(赤、がつく本)今回気付いたのだけど、桜庭さんの付ける名前のセンスも元からあまり好みではないし、自分がこの作家さんのファンにはなれないのはこういうところかもしれない。文章や題材はいつもかなり好みなので残念です。