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七つの死者の囁き  (ねこ3.7匹)

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有栖川有栖道尾秀介石田衣良鈴木光司、吉来駿作、小路幸也恒川光太郎著。新潮文庫

死者はそこにいる。生きている私たちの記憶の中に、夢の中に、そしてすぐ背後に。私たちを見つめ、語りかけ、時に狙っている。ひそやかで絶え間ない、死者たちの攻勢ーー。少女の幽霊は窓辺に立ち、死んだ恋人からのメールが届く。自殺した女の呪詛が響き、亡くなった男は秘密を打ち明け、死霊の化身が地底から出現する。恐怖と憂愁を纏った七つの死者たちの物語。文庫オリジナル。(裏表紙引用)


ホラーアンソロジーでございます。道尾さんの短篇に惹かれたのが一番の理由なのですが、恒川さん初め好みの作家さんが名を連ねていたので。
では、それぞれの感想を~。

『幻の娘』有栖川有栖
普通にミステリ仕立てのホラーでなかなか。ホラー仕立てのミステリと言った方が正しいかな。有栖川さんらしいのですが、刑事ものなのでどうしても社会派の雰囲気しか出せていない^^;

『流れ星のつくり方』道尾秀介
げげっ^^;、真備シリーズでした!
期待通り!!道尾さんらしいトリックとおぞましさに溢れた秀作です!もちろん一番気に入ったのがこれ。キレのいいオチに脱帽。

『話し石』石田衣良
わずか数ページ、星新一さんをリスペクトしたショートストーリーです。まあ、面白さはあまりなかったのですが^^;石田さんの星さんへの愛に溢れた良い作品ですね。それだけと言えばそれだけ。

『熱帯夜』鈴木光司
二番目に気に入ったのがこれでしょうか。
カップルの男性のささいな行為が招いた悲劇。生理的に気持ち悪い、という女性の言葉がこの場合効果的だなあと。単純にある一コマ、という展開だけで終わらない所もさすが鈴木さんという感じがしますね。完成度の高い作品でした。

『嘘をついた』吉来駿作
この中で唯一読んだ事のない作家さんです。この方は以前から気になっていたので、その長編を読むかどうか決めるにはいいかな、と^^
雰囲気、ユーモア、謎と三拍子揃った実力は感じました。少しぎこちなさは感じるものの、小道具の使い方もうまいしキャラクター造形もしっかりと。

最後から二番目の恋小路幸也
ほろりと切なくあたたかく、それでいてミステリー的な毒も謎もあり。実力派の作家さんらしく、独特の設定ですね。もう一度やり直したい恋があるあなたは是非^^

『夕闇地蔵』恒川光太郎
ぞぞぞ。この作品だけが桁違いにコワい^^;;昭和の日本的な雰囲気とその香りはやはり健在ですね。冬次郎の奇妙な行動が不気味すぎます。死体もたくさん登場^^;これ、どこかに収録されるのかなあ。アンソロジーの中だけにおさまるには勿体ないような。


道尾さんの作品が大当たりしたのが大きいのですが、それでも「いまいち」と呼べる作品がなかったのが良かったです。(石田さんのは企画ものとして考えて除けるとして^^;)今ならたいていの本屋に積んであると思いますし、500円以下と安いのでさあファンの方は読むべし読むべし。