すべてが猫になる

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短劇  (ねこ3.7匹)

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坂木司著。光文社。

ささやかな悪夢を、お目にかけましょう。……醒めないかもしれないけれど。
たとえば、憂鬱な満員電車の中で。あるいは、道ばたの立て看板の裏側で。はたまた、空き地に綴られた穴ぼこの底で。聞こえませんか。何かがあなたに、話しかけていますよ。
坂木司、はじめての奇想短編集。少しビターですが、お口にあいますでしょうか。(帯引用)


うっしゃ新刊一番乗り!(ノ^^)ノ ←子供か^^;
初の奇想短編集という事で、またまた坂木さんの新たな世界を堪能。タイトルの通り、26編収録のショートストーリー集となっております。こういう不思議ストーリーは大好きですよ、鼻息荒く読ませてもらいました。最初の1、2編はなんというかオチのついた恋愛ものだったので、正直膝がカックンしました^^;この調子が続けばやばいな~、と思っておりましたが、進むにつれてホラー調のもの(『最先端』『肉を拾う』)や人間の悪意が放出されまくるもの(『しつこい油』『恐いのは』)や毒のビシバシ効いた幻想もの(『穴を掘る』)へと変貌してゆきます。はじめは「いい話」ばかりを集めるつもりだったんだって。どこがだ~^^;;どれもやばい。。

しかし、小説の毒、短篇としての切れの良さ、という点で見れば”惜しい”ものの方が数が多かったのが残念。ストーリーテラーとしての手腕は発揮されているものの、内容が奇想天外すぎてオチがすとんと来ないものや発想の面白さに心を奪われて最後が物足りなくなるという読後感をふんだんに経験してしまいました^^;褒めてんのかけなしてるのか微妙なところなんですけども。
オチがばっちり来たのは『MM』『最後』『ほどけないにもほどがある』『物件案内』『秘祭』かな。
割と下ネタ?が多かったのも新境地なのかな^^;

坂木司の本性」という売り文句が帯に付いてあるけれど、それは前述した”惜しさ”で現れているかも。毒がある作風なのはファンには意外でもなんでもないし。どこかで読んだようなお話の一歩手前、みたいな、どうしてもその毒は現実レベルで。その先へは地獄のコマを進められない人柄の良さを感じてしまったのは今回プラスにはならなかったかな。。