すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

女彫刻家/The Sculptress (ねこ3.8匹)

イメージ 1

ミネット・ウォルターズ著。創元推理文庫

オリーヴ・マーティンーー母妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所に血まみれの抽象画を描いた女。無期懲役囚である彼女には当初から謎がつきまとった。凶悪な犯行にも拘らず、精神鑑定の結果は正常。しかも罪を認めて一切の弁護を拒んでいる。わだかまる違和感は、歳月をへて、疑惑の花を咲かせた……本当に彼女の仕業なのか?MWA最優秀長編賞に輝く、戦慄の物語。(裏表紙引用)


ふひょぉ~~~~~面白かったス。
初めて読んだ作家さんなのですが、意外にも大長編ながらすいすい読めましたね。翻訳が良いのか元がそうなのか、平易な文章でとっつきやすいです。

タイトルだけではどういうお話が想像がつかなかったのですが、かなりグロテスクです。被害者の遺体の惨状からしてもそうなのですが、加害者とされるオリーヴの容姿がまず凄い。身長180センチ、体重165キロ(!!)を超す図体というのですから。発言も飄々としているし時には狂暴にもなりどこか胡散臭い。狂人なのか、聡明なのか、それとも紙一重なのか。自分にはそういう印象でした。
肥っている事を理由に子供の頃から周囲に嫌われ続けたオリーヴ。挙動も不審で、誰しもがオリーヴの凶行を疑わなかったが、初めて彼女を擁護する人間が現れた。それが作家のロズです。
彼女はオリーヴの冤罪を信じ、孤軍奮闘します。
ロズとオリーヴを取り巻く人間関係の面白さ、ドラマティックさもなかなかです。ロズ自身にも暗い過去があり、彼女の身に起こる様々なトラブルや変化と共に、オリーヴとその関係者の人柄が浮き出されて行くのです。
とにかくそのオリーヴという女性そのもののドラマという気がしましたね。真相は真相で意外なのですが、目に見えているものと内に秘めているもの、社会がそうさせたもの、すべてが絡み合って深みのあるミステリーでした。

一つ難癖を付けるなら、ロズかなあ。彼女の性格そのものは愛らしいのだけど、オリーヴに対する気持ちに関しては違和感がありました。物語的には興奮出来るキャラクターではありましたが、ロズが彼女に惹かれた理由というのがあまりリアルに伝わって来なかった気がします。読者にしてみれば、ロズと違ってオリーヴが目の前で喋っているわけではないのですから。

とは言え満足でした。他の作品もいつか読んでみようかな^^