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風少女  (ねこ3.2匹)

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樋口有介著。創元推理文庫

父危篤の報を受けて帰郷した斎木亮は、中学時代に好意を寄せていた川村麗子の妹・千里と偶然に出会う。そこで初めて知った、麗子の死。事故死という警察の判断に納得のいかない二人が、同級生を訪ね、独自の調査をはじめると……。赤城下ろしが吹きすさぶ風の街・前橋を舞台に、若者たちの軌跡を活き活きと描き上げた,著者初期の代表作。大幅改稿で贈る、青春ミステリの決定版。(裏表紙引用)


青春ミステリっていいねえ~^^
センスある文体と会話でいつも心地いい読書をさせてくれる樋口さん。内容は殺人容疑を扱ったもので、人の死も多いため書く人によっては陰惨なお話。哀しさ、力のない者の儚さと同時に、未来への展望も見せてしまうのは作者独自の世界だろうか。若いというだけでそれが錯覚ではなくなるのはやはり美しくうらやましい。
ミステリ的にも特に不満はなく、登場人物の個性をうまく使って意外な真相が効果的に映るのも良かった点。

ただ、登場人物全体がどこか冷たさが強調されているような気がしてならない。姉にラブレターを渡したかつての少年に対し、「そういう手紙には黴菌が付いてるって言ってた」と言う少女が出たかと思ったら、遺族に対して「格好悪い死に方」と面と向かって言ってのける少年がいる。しかも当人に悪気がなく、それで普通に会話が成立しているのがどうもむずむずしてやってられない。まれに大人でもこういう人間がいるが、必ず「モテない理由がわかる」といった印象を受けるタイプなのだ。こういう清潔で颯爽とした少年少女達にはふさわしくないと思ったのだがどうだろう。