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黄金の灰  (ねこ3.8匹)

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柳広司著。創元推理文庫

1873年、オスマン・トルコの辺境、ヒッサルリクの丘。シュリーマンは、伝説の都市トロイアがこの地に実在したことを証明する、莫大な黄金を発見した。しかし、それをきっかけに、シュリーマン夫妻の周囲で不可解な事件が続発するーー。混沌と緊迫の世界で繰り広げられる推理合戦の果てに、シュリーマンがくみ取った驚愕の論理とは?鬼才のデビューを飾った傑作本格ミステリ!(裏表紙引用)


ハインリッヒ・シュリーマンと言われても「名前は聞いたことあるな」というだけのゆきあやさん。でも大丈夫、プロローグの”シュリーマンの生涯”を読めばたちどころにそんなおいらもいっぱしのシュリーマン博士になれました。今までだってマルコ・ポーロソクラテスフランシスコ・ザビエル
「何をした人か説明せよ」と言われたら「え・・だからその・・」と返すだけの人物が目白押しだったから(無教養ここに極まれり^^;)まあ今回も乗り越えられるでしょう。

このシュリーマン、なかなか個性的に描かれていてかなり面白い。マイペースで計算高く、ちょっとばか。奥さんの苦労がしのばれます。彼が得意なのは”推理”であり、次々と起こる殺人事件の謎を独力で解いて行こうとする心意気が男らしい。登場人物がそれぞれ曲者ばかりで、それぞれの役割をきちんと持っているのもさすが柳作品という手応えを感じる。ただ殺人や放火の謎を解くだけの物語でなく、そこから様々な真相が暴かれて行く。ラストはなかなかに派手で満足がいった。

やはり柳作品はハズレというハズレがない。数年前からここにいる皆さんと共に追いかけていた柳さんが今年某ランキングで2位という快挙を成し遂げた事が正直とても嬉しい。これで知名度も一気に上がることでしょう。ウラ・・やソブ・・のように、一部で盛り上がっているマニア向けの作家ではなく、絶対に本読みには万人受けするのだと信じて応援して来ただけに、これからの世間の反応がみもの^^