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スナーク狩り (ねこ4.6匹)

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宮部みゆき著。光文社文庫


元恋人慎介の結婚式に散弾銃を持って現れた慶子。その上司、織口が慶子の銃を盗む計画を立てる。
慎介に反発する妹の範子は、織口の部下、修司と共に織口の行方を追う。そこにからむ、会社員の神谷。彼の妻はノイローゼ?で入院、一人息子の竹夫は緘黙児ー。

交互に進行し、からみあっていく登場人物たち。
それぞれが複雑な事情を持ち、それぞれの理由、目的で一つの方向へ向かう。

この作家の心理描写は実に巧みで、場面転換するごとにそれぞれの登場人物に感情移入できます。

サスペンス、推理小説は読者の期待、想像を裏切ってこそ秀作だ、と言えますが、こういう作品の場合
一概にそうは言えないのではないか、、と思いました。
「こうであって欲しい」というほぼ明確な到着点があるのではないでしょうか。
犯人が非道であるからこそ、ですが。
最近の社会派推理は、どうしてもそこが曖昧であり、曖昧であるからこそ現実的だという風潮?を
感じている私ですが、この作品に関してはその点は見事。

犯罪が起きてしまった以上、なかったことには出来ない、だから「満足、爽快」なんてことは期待しません、最初から。
この結末がベストとは思えない箇所も一部あるのですが、物語としての収束は素晴らしかったように思えます。