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名探偵の肖像  (ねこ3.6匹)

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二階堂黎人著。講談社文庫。

探偵としてもすぐれた才能を発揮した怪盗アルセーヌ・ルパン。アリバイ崩しの鬼貫警部。密室殺人を解くヘンリー・メリヴェール卿。往年の名探偵の華麗な推理に挑戦した贋作を含む短編五作、敬愛するJ・D・カーについての芦辺拓氏との対談、随筆を一挙収録。本格推理を愛するすべての人に捧ぐ必読の一冊。(裏表紙引用)


これは二階堂さんの蘭子シリーズ以外のものでは一番面白かったぞ。入ってる元ネタが好き、っていうのもあるかもしれないけど、パスティーシュ以外の二作もなかなか好みだった。

まずはルパンものの『ルパンの慈善』。これはカトリックのオルロージュ修道院が所有する『聖フランシスの燭台』の盗難にまつわるお話。密室状態の聖安所からどのようにして燭台は盗まれたのか!?ほとんどガニマールとルパンの問答なのだけど、ルパンらしくラブロマンスもあり意外性もアリでなかなか良いね。でもだいたい犯人は分かったよ。ゆきあやの密室バリエーションの知識はあなどれないぜ。

鬼貫警部ものはあまり馴染みがないのと、写真を使ったアリバイトリックものはあまり好きじゃないのよね。ただ、ポラロイドじゃなくてデジタル・カメラを扱っているところが今風かな。容疑者三人の名前が野菜なので面白い^^;久利(きゅうり)、奈須、根木だって^^;

『素人カースケの世紀の対決』これはミステリマニアなら誰でも楽しめるんじゃないかな。レストランならぬ読書ラン”舞羅運”にて、ソムリエならぬ読むリエがお客に相応しいミステリを選んでくれるという^^;純粋なミステリファンであるカースケと、居合わせたエラそうな書評家がブラインド・テストで対決。これはちょっとズルいと思ったけど、軽く読むにはこれが一番好きだった。
それにしても、浦賀和宏の本を”人生経験が足りない”と発言する読むリエには苦笑。

ネクロポリスの男』はSF仕立てのサスペンス。冷凍保存されていた凶悪犯が目覚めた時。。
これは二階堂さんらしくないお話で、ちょっと気分を変えてこんなのも良いかも。

『赤死荘の殺人』は定番といった感じ。蘭子の短篇のおかしなやつよりはよっぽど無難に良いと思う。。


芦辺さんとの対談は、すいません飛ばしました^^;
最後のカーの全作品を論じるコーナーはなかなかお役立ち。自分と反対意見の本もあるのだけど(皇帝のかぎ煙草入れとか)、おおむね参考になる評価をしてらっしゃるっぽい。カーの書庫作った暁には引っ張り出してみようかな。