すべてが猫になる

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死写室  (ねこ2.8匹)

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霞流一著。新潮社。


どの事件にも、映画の匂いがする――。映画館、試写室、ロケ先、セットの撮影現場etc.で発生する、
奇怪な事件の数々。不可能犯罪としか思えない状況を、酩探偵・紅門福助が、アクロバティックな
論理で次々と解決に導いていく。読めば映画製作の裏事情がすべて分かる、かもしれない?! 軽妙な
ユーモアで描く連作ミステリー。(あらすじ引用)



この間読んだバカミス・アンソロジーバカミスじゃない!?』でトリを飾っていた霞さんの作品が
意外にもなかなか良かったので、駄目元だと思い短篇集を見つくろってみました。霞作品を読むのは
これで3作目、すべ猫に霞さんが登場するのは初めて(という事で察しておくれ)。

映画業界を舞台にした連作もの。「バカミスバカミス」と言われ続けて来た作家さんなので、
もちろんそれを覚悟して読み始めましたが、これが意外とまとも。雰囲気は軽いのですが、
くだらないジョークを飛ばす探偵もいなければ、ボケとツッコミが笑いを誘わない刑事コンビも
いませんでした。しかし、文章が自分の読むリズムと合わないのはここでも同じ。それでも
トリックが自分のテンションを上げるようなものであれば、、と思いとりあえず2作読んで
やっぱりダウン。犯人が見つかるのが早いのはそれでいいのですが、その根拠が薄弱に感じ
ドラマ性も淡白。


とりあえず「最近挫折しすぎだな」という自覚と後ろめたさがあったので、3日間寝かせて
見事再挑戦。
おっと、ここからがなかなか良かった^^;短篇集は1作お気に入りが出ればラッキーと思え、が
鉄則のゆきあやですが、なんとこの作品集では3作もありました^^v
まずは俳優とマネージャーのバイク事故を発端とした事件、『霧の巨塔』です。この巨塔の
真相を、一読して「バカだ」と思わないぐらいのバカ真相。真面目に筋の通る(だけの)
立派なバカミスと言えましょう。
そして『首切り監督』これの入れ替えと凶器の意外性、残虐性には興奮。
スタンド・バイ・ミー』の人間関係の機微をしみじみ味わえるラストも好きですが、表題作
『死写室』のトリックも絶妙。こういう設定の連作なら、1作こういうネタを仕込まないとね^^

最後の犯人当てものや『モンタージュ』は普通でしたが、まあ、途中からは思っていた読みにくさも
感じなくなり(いいかげん)。言うなら、探偵役の設定が普通で不満、ぐらいかな。