すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

見えないグリーン/Invisible Green (ねこ3.6匹)

イメージ 1

ジョン・スラデック著。ハヤカワ文庫。


ミステリ好きの集まり<素人探偵会>が35年ぶりに再開を期した途端、メンバーのひとりである
老人が不審な死を遂げた。現場はトイレという密室ーー名探偵サッカレイ・フィンの推理を嘲笑うかの
ように、姿なき殺人鬼がメンバーたちを次々と襲う。あらゆるジャンルとタブーを超越したSF・
ミステリ界随一の奇才が密室不可能犯罪に真っ向勝負!本格ファンをうならせる奇想天外なトリック
とは?解説:鮎川哲也法月綸太郎(裏表紙引用)


最近気になっていた作家さんです。アンソロジーバカミスじゃない!?」で紹介されていて、
すご~く興味があった矢先の復刊だったようで。ぴかぴかの表紙、でかい文字に万歳と叫び、
東野圭吾3冊の間にはさんでこそこそと購入。

あまり自分はコッチ系詳しくないんで、感じたままを書きます。

とにかく読みやすい。字の大きさだけに寄るものではないと思います。心配していた「名前の混乱」
もさほどではなく、ストーリーも設定もわかりやすい。最初から「クリスティみたい」と思って
読んでいたら作中でやはり名前が挙げられていました。探偵役がちゃんと存在しているので、
視点がブレずに入り込みやすかったのも○。

複数の死者が出る事件ですが、一人目の真相はしっかりとスタンダード。二人目の被害者にまつわる
ある真相が一番度肝を抜かれました。これと似た仕掛けのミステリがあったと思うのですが、
明らかにこちらが先ですね。そちらがそれをトリック、事件の全体的な肝としていたのに対し、
こちらは推理の構築上の一つでしかありません。メモ書きの謎も含め、一番話題となりそうなのは
最後の被害者のトリックでしょう。

ただ、物語のスリル、その雰囲気については若干不満も。これが作家のカラーなのでしょうが、
それが不足していると本格ミステリの”遊び”(グリーンを始めとする色の謎など)が
ふざけているように見えてしまうので個人的には物足りないかも。