すべてが猫になる

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告白  (ねこ3.8匹)

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湊かなえ著。双葉社


愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。
わが子を亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。様々な人間の言葉が
事件の真相を解き明かす。 第29回小説推理新人賞受賞作。(あらすじ引用)



先日beckさんのところで紹介されていた作品。恥ずかしながらわたくしこの新人作家さんの話題作を
全く知らず、慌てて調べる事になりました。驚いた事に図書館では既に予約がいっぱい。こういう
のって旬の今読みたいじゃない。よし、買うか。と思ってe-honで検索したら入荷待ち。負けじと
普段利用しないアマゾンで注文したら「発送予定日:9月30日~10月上旬」の文字。
はぁ!?(即キャンセル、すいません^^;)
仕方なくジュンク堂へ足を伸ばすゆきあやさん。真っ先に「告白」を探すと……ない。ない。
ないぞー!…………あった。おおお、「告白」だけ売れまくってるのか本と本の間でへこんでいて、
残り2冊しかなかったところを捕獲!!ひええ、本当に今売れに売れているのね。。それとも
元からたくさん部数刷ってなかったのか。せっかく来たのだからと(←?)、『海の底』
阪急電車』『目薬α』を抱え込み、ほくほくで帰宅。


前置きなげーよ。

では感想。


女教師が教壇で語り出す演説から始まる本書は、掴みのインパクトとしては申し分ない。
我が子を殺された犯人を生徒の中からいぶり出す、というストーリーかと思いきや、第一章で
既にある二人の生徒を糾弾し始めるので「およよ」と思った。衝撃的な展開で幕を閉じ、
第二章からは女教師の姿は消え去ってしまう。その後、章が変わるごとに視点が代わり、
様々な立場、角度から事件の真の姿を映し出して行く。

beckさんも仰っていたが、惹き付ける面白さは十分持っているものの、さほど目新しく斬新な
構成、テーマだとは思わない。衝撃という意味なら黒武洋氏の『そして粛清の扉を』の方が
勝っていると思うし、それこそ「面白さ」で勝負するならこれより上の作品は世の中に
いっぱいあると感じる。
この作品の魅力は、まさに自分が「およよ」と思ったその時、既に作者の勝利は確定していたと、
一言で言うならそれに尽きる。そもそもこういうリアリティとフィクションを混合させた
作品は、読者に説得力を持たせられなければ終わりだと思う。時代にシンクロした少年犯罪への
糾弾と、病んだ人間の創作がマッチしているからこそ、読む手を止めずに先へ先へとページを
めくり続ける事が出来る。

そして、物語の締めくくりのキレの良さはどうだろう。このゴールへ辿り着くために、
よくぞこれだけの構成、設定を編み出して来たもんだと感嘆の溜息がこぼれた。
元々こういう物語は好きなので個人的に好意的に読めたが、これはぜひ色々な方の感想を
聞いてみたい作品。1400円と安価なので是非どうぞ^^